スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

Matsuyama Cafe

16軒目

  • 奈良県明日香村
  • 近鉄電車

「僕がたどり着いた場所」。明日香村のリノベーションカフェ

「都会でワイワイしたいわけではなくて、夜はちゃんと寝たいし(笑)、僕は田舎暮らしが合うんやな、と」

奈良県明日香村に2019年4月にオープンした『Matsuyama Cafe』の代表・松本昌さんは、そう言って笑った。

大阪芸術大学出身の松本さんは、卒業後も教授の助手を務めるなどして、同学に計9年間、身を置いていた。芸術分野の道を模索していたけれど「あるとき、(その仕事を)やらなくていい、と思ったら気がラクになった」と言う。
そのときのもう一つの気付きが、冒頭の言葉。そうして生まれ育った明日香村で、カフェを開くことに。
「食事や飲みものを提供して対価をいただく飲食業のシンプルな流れや、お客さんと直接接する仕事が、僕には健康的に感じられて心地よかったんです」

「自分のお店を持ちたい」と思いながらも、いい物件が見つからずに一度はあきらめていたという松本さんは、自らを「慎重なタイプ」だと評する。 でも、芯はブレなかった。一念発起して「やはりお店を持とう」と決めた翌月に、のちに『Matsuyama Cafe』になる元農協の倉庫物件が見つかったというから、人生とはおもしろい。しかも飛鳥駅の目の前で「道の駅 飛鳥」からも徒歩約1分という好立地だった。

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飛鳥駅の改札を出たら、線路沿いに左へ歩いてすぐ。入口に置いてある、お店のロゴにもなっている松の盆栽が目印。

セルフリノベーションを始めたのが2018年10月。
「築80年の倉庫で、長い間使われていなくてかなり古くなっていたんですけど、掃除から始め漆喰を塗って壁が一面きれいになったら"あ、良くなっていくな"と感じられて、進めていきました」
作業は、松本さんの父で写真家であり飛鳥観光協会会長でもある上山好庸さんも手伝った。

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床の基礎部分と骨組みだけは大工にまかせ、ほかはセルフリノベーション。
「自分でつくったから、今後何か壊れても自分で直せます」と松本さん。

松本さんは婿養子になって松本姓になったため、店名は両家から一字ずつとって名付けた。
「悩んだんですけど、『松』は縁起がいいし『山』も好きやし。それに今の僕があるのは両家あってのことやから」

こうして同店ができあがった。
慎重であっても、自分の心身にぴったりの衣類を求めるかのように粘り強く探していれば、こうやって実現できるのだな----。
『Matsuyama Cafe』のカウンターで松本さんと話していて、わたしはそう勇気づけられた。

リノベーションのコンセプトは「古いものを新しい感性で」。家具類、内装など、店内の随所に芸術分野や飲食業で腕を磨いてきた彼のセンスが光っている。
調理も松本さんの担当。いただいたのは「季節のプレートランチ」。月替わりの内容で、明日香村や県内の生産者が育てた素材がふんだんに使われている。

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県内の廃材置き場から梁材をもらい、切って組み合わせてつくったカウンターテーブル。

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もち豚のハニーマスタードグリルなどがワンプレートになった「季節のプレートランチ」は、スープとドリンク付きで1,350円。内容は月替わりとなる。

松本さんは明日香村出身だから、地元にいる人も来店するし、上京した友人たちが帰省時に立ち寄ることもある。また、村に移住した若い人たちが足を運ぶこともあれば、観光客が訪れることもある。『Matsuyama Cafe』は地域にありそうでなかなかない、さまざまな層が出会う"交差点"にもなっている。
「リノベーションをしていた間だけは、自分の空間でしたけど、カフェはお客さんのもの。訪れる誰のものにでもなる空間だと思うんです」
そう言って、お店で訪れる人を迎え入れる松本さん。
また、お店と彼に、会いに行こう。

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松本さんのオススメドリンクは「アイスカフェモカ」。550円。
明日香村で本格的なエスプレッソマシンを導入しているのはここだけだそう。

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手づくりケーキも用意されている。各480円。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

Matsuyama CafeHP

Matsuyama Cafe
交通
近鉄電車 飛鳥駅下車すぐ
住所
奈良県高市郡明日香村越2-1-1
電話
0744-35-1003
営業時間
11:00~18:00(17:30L.O.)
定休日
水曜、第2・3火曜

著者プロフィール

小久保よしの(こくぼ・よしの)/フリーランス編集者・ライター

ローカルやソーシャルをテーマに、雑誌『ソトコト』『奈良食べる通信』などで執筆中。担当書籍は『コミュニティナース』矢田明子、『ローカルベンチャー』牧大介、『わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり』畠山千春(ともに木楽舎)、『だから、ぼくは農家をスターにする』高橋博之(CCC)など。2017年、東京から奈良へ移住。奈良の編集ユニット「TreeTree」共同代表。