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社局のお仕事

第19回 Osaka Metro BRTのお仕事

  • Osaka Metro

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第19回は、第10回でプロモーション課の若手にお話を聞いたOsaka Metro。今回は、新たな社会実験を行うとのことで、その内容、そして経緯や目的、また導入した新車両について交通企画課の赤木淳さん、田中広司さん、計画課の稗田夏美さんにお聞きしました。

----まず、社会実験を行うということなのですが、どういったことを行われるのでしょうか?

赤木さん「大阪市交通局だった時に民営化を議論される中で、民営化に際して大阪市議会からOsaka Metroという新会社への要望事項というものがありました。その中のひとつが地下鉄8号線(今里筋線)でのBRT社会実験の実施です。
地下鉄の延伸といってもかなり莫大な事業費がかかります。民営化という中で事業する限りは採算がとれないといけませんので、まずは、いまざとライナーの愛称でBRT(BUS RAPID TRANSITの頭文字、和訳はバス高速輸送システム)を実験的に走らせて、需要の喚起・創出、及び鉄道代替の可能性を検証することとなりました(詳しくは、https://www.city.osaka.lg.jp/toshikotsu/page/0000453546.html)。」

----なるほど。それを4月1日から始められたと。延伸しましょうということはもともと要望としてあったということですが、その要望を聞いて、具体的にするにはどういったことから始まっていくのでしょうか?

赤木さん「社会実験ではBRTをどこまで運行させるかというルート選定から検討を始めました。今里筋線の延伸区間である今里駅から湯里6丁目までが基本的な運行ルートとなりますが、湯里6丁目までですとご利用される方が限られてくる。そこで、長居まで行けば御堂筋線や他の鉄道もありますし、あべの橋まで行けば天王寺駅もあり、そういう駅と接続することで、より多くのお客様に利用していただける上に、地域を活性化させられると。そうして、BRTのルートに関しては今里筋線の延伸区間を基本としつつ杭全からあべの橋まで、湯里6丁目から長居までというルートを設定しました。」

2019_0304_0027.jpg左、交通企画課の田中広司さん、右、計画課の稗田夏美さん。

----それは早い段階から利便性について話が出たということでしょうか?

田中さん「昨年度くらいにルートを検討しまして、その中でこのルートがより需要が見込めるだろうという路線になりました。」

----本格的にこれで決定となったのはいつ頃からですか?

赤木さん「ルートの骨格は2018年3月に決まりました。」

----ルートが決まった後は、どういうことを決めていくんでしょうか?

稗田さん「バス運行の協定の締結や運賃を決めます。」

----大阪市内を走るバスなので一律ということではないのですね?

田中さん「地下鉄と乗り継いだ時の割引などいろいろ検討しております。」

稗田さん「地下鉄の延伸という位置づけとはいえバスなので一律でいくのか、地下鉄の区制でいくのかを運賃制度担当で検討した結果この料金になっているわけです(全区間均一 大人210円、小児110円 ICカードでの地下鉄との乗継割引額は160円と、一般路線バスよりも大きい)。」

2019_0314_0074.jpg新車両のいまざとライナー。窓が大きく広々とした印象。外装は全て同じだけれども内装は14両全て違ったデザイン。どの車両かは、乗ってみてのお楽しみ。見た目にはわからないけれど、これまでの車種はトルクコンバーターAT(自動変速機)車だったのが、こちらは機械式ATに。

----なるほど。これがうまくいって地下鉄になるよというときに「全然値段違うやん!」ということではダメということですね。

田中さん「一方で需要喚起という側面もあるので、乗りやすい料金設定でないといけないというのもあり、この料金に設定させていただいています。」

----それでは、運行するバスの車体はどのように決まったのでしょう?

稗田さん「環境にも優しいということも第一に考えていかないといけないということでハイブリッドの車種が決まり、デザインもシンボル制を持たせようということを考えて、大きいコンセプトを決めてから、それに紐付ける形で車外のラッピングであるとか、停留所、車内ラッピングなどをデザインしています。」

2019_0304_0075.jpgいよいよ走り始めたいまざとライナー。バスとしての新車は2012年から7年ぶりの導入。バスの行き先案内盤もこれまでの色から白のLEDに変更し、視認性も向上した。

----そのコンセプトというのはどのようなものでしょう?

稗田さん「基本BRT社会実験のコンセプトとして"つながる"と"ときめく"と"はじまる"があります。
"つながる"は地下鉄8号線と繋がっていくであったり、地域との繋がりという意味です。路線的に地域密着型を意識していますので、そういったところでも繋がりは強く意識しています。
次に、"ときめく"というのは市内でBRTを走らせるのが今回初なんですね。今までバス路線しか走ってなかったところもバスに似た形にはなりますが、新しい鉄道システムを導入することで、今までの生活スタイルが変わっていくはずです。そこで、どんな風に今後自分たちが変わっていくのか未来に対して、ときめくみたいな希望を持つという意味合いです。
最後の"はじまる"ですが、新しいシステムができるのでその始まりや生活の始まりという意味合いです。そのコンセプトを決めるとともに、シンボル的な色も決めていきました。その色が車体に使っているこのオレンジになります。」

----その色は何か特別な呼び名などはありますでしょうか?

稗田さん「特別な呼び名というのはないのですが、今里筋線のラインカラーであるゴールデンオレンジに対して、ここからさらに繋がっていくという意味を込めて、形も矢印のような形にしつつ色も濃くしています。車体のデザインに関してはBRTの速達性というところもポイントになってきますので、この伸びて行く感じでそれを表現しています。」

----ちなみに、これはすべて新車になるのでしょうか?

稗田さん「はい。新車です。」

----この名称については、いつ頃決まったのですか?

赤木さん「車両のデザインと一緒に、2018年6月に実施した投票をもとに決まりました。愛称が4つ、車両も4種類候補がありました。その候補に投票をしていただき"いまざとライナー"という名前とデザインについて決定したという流れになります。」

2019_0304_0068.jpgこちらが6月に行われたデザイン投票のチラシ。上部に名称案、下部に車体のデザイン案が記載されていた。中には花をあしらったデザインも。

----投票の結果は僅差だったのでしょうか?

稗田さん「デザインに関しては、決まったものの票が多かったです。」

----ちなみにですが、個人的にはいかがでしょうか?

稗田さん「私はこの"えーとらむ"の字体がすごくかわいくて個人的には好きでした。」

----音的に大阪らしさもありますしね。8号線のエイトともかかっていると。ちなみに、何車両くらいあるのでしょう?

稗田さん「購入したのは14車両になります。」

----バス停なども作るとなると、やはり実験とはいえ大掛かりですね。

稗田さん「既存のバス停を改修してそのまま一般路線バスも停まり、BRTも停まるというバス停もあるので。」

2019_0314_0080.jpg地下鉄今里駅 停留所

----バス停の幅などは既存のもので間に合ったんでしょうか?

稗田さん「そうです。」

----このデザインを見ると屋根がありますが、これは昔からですか?

稗田さん「これは新しく作っています。」

2019_0314_0006.jpg内装は、ご覧の通りこれまでのバスにはない斬新なラッピングが14種。これまでの車両との違いは、デザインだけでなく車椅子のベルトが備え付けとなっている。

----なかなかこういうものは見かけませんね。

田中さん「ここはBRTの出発地点であり、地下鉄今里駅と接続することからグレードの高い停留所になっています。他の既存のバス停はテントがオレンジ色になるという形です。大きさとかは特に変わりません。」

----大阪市交通局時代からこういった試みは初めてなのでしょうか?

田中さん「BRTは初めてですね。」

----結構走りますね。エキスプレス扱いってことですね。だいたいこれくらい利用がある、という見込みはありますか?

2019_0314_0004.jpgこちらは別の車両の内装。ハイブリッド車はこれまでにもあったが、こちらはハイブリッドモーターがミッション側についているタイプ。これまではエンジン側についていた。

赤木さん「BRTとしての需要はある程度想定はしていますが、1万人以上乗ってもらったとしても、地下鉄で採算が取れるかというとそれはまた別の議論となります。なかなか地下鉄をひくというのは大変なことなんです。このBRTもただ走らせるだけではなく、並行して地域の活性化をしていかないと事業としては難しいんです。
そのため、この社会実験は大阪市とOsaka Metroが共同で実施していますが、交通政策基金から出資されてイニシャルコスト(初期費用)を負担してもらっている事業主体として我々Osaka Metroと、実施主体の大阪市が協力して、需要の喚起・創出を図り、地域の更なる活性化を図っていく必要があります。実際走るのはバスですから、バスはOsaka Metroのグループ会社である大阪シティバスに委託して運行を行います。」

----この実験というのは、そういった形で成り立っているんですね。よくわかりました。この車両の金額もそうするとその基金から出ていることになるんですね。

赤木さん「車内外のラッピングの違いやモニターが車内の前後にあり動画が流れたり、運行状況をBRT用に設計したり、そういった装備は従来のものとは違いますが、車両本体自体は従来の新車と同様となっています。」

2019_0314_0017.jpg前方だけでなく後方席にも見えやすいように液晶モニターが設置され、サイネージも導入。停留所の情報だけでなく路線情報も。

稗田さん「車内のモニターでは、地下鉄天王寺駅や長居駅、今里駅に加えてJR東部市場前駅で、到着予測時刻から乗り継ぎできる電車の出発時刻を表示させる機能も備えられています。」

----そういう装備もされているわけですか。また、ただ作りました、はい乗ってくださいではなく、近隣の魅力をどのようにすくい上げたり、連携したりして利用につなげていくことが大事だということですね。話は少し変わりますが、試験運転というのはされていたのでしょうか?

2019_0314_0009.jpg小屋の中のような印象の内装。ちなみに、バスは毎日11車両が運行するそうで、今里駅〜杭全間は約10分おきで走る時刻表となっている。

稗田さん「新しい路線でもありますので、ドライバーの習熟運転やシステムチェックなども実施しています。」

----そうするとすでに近所にお住まいの方はあれが走るんだなという感じで見ておられたでしょうね。

田中さん「オレンジ色の車外がよく目立つので、期待を持ってご覧になっておられるとありがたいです。」

----中も結構派手ですよね。14車両全部違うんですか。

稗田さん「先ほどお話したコンセプトからきてるんですけど、"ときめく"ということで。車内だけど室内空間、乗っている間楽しく過ごしてもらえたらと、14車両別々の内装になっています。」

赤木さん「当初検討の段階では15案までありました。最終的に絞り込んだ結果14案のデザインが採用されました。」

----当初の予定通りのデザインが上がってきたというイメージでしょうか?

稗田さん「そうですね。途中で施工上変えたものもありますので、全く同じというわけではないのですが、ほぼイメージ通りのデザインとなっています。」

2019_0314_0049.jpg全体的に青を基調としたデザイン。壁にはトロピカルな飲み物がプリントされている。見た目にも爽やかで夏に乗りたくなるかも。

----内側もラッピングなのでしょうか?

稗田さん「そうですね、内側もラッピングです。」

----シートはどうなってるんですか?

稗田さん「シートは布張りを作ってもらったんですよ。ナチュラルがテーマの内装ならこういう木目調のものを作ってもらい貼っています。素材は普通のシートなんですけど。」

----プリントで作られているんですね。少々派手な人が乗ってきても、こっちの方が派手ですね(笑)

稗田さん「そうですね(笑)。つり革にリボンを付けているキュートなものもあります。和のテーマだと毬(マリ)がついていたりと、それぞれターゲットを決めてデザインしています。」

2019_0314_0055.jpgこちらの床も天井も全てラッピング。画像だと本物っぽくも見えてしまう。

赤木さん「14車両全て違うデザインというのはなかなかないと思います。」

----確かに、珍しいと思います。

稗田さん「14という数字はテーマを出すときに非常に難しかったです。12なら月とか季節を表せたりと収まりがいいのですが、当初は15種類でしたが何をテーマに?と迷いました。」

----車内をこういうふうにしようというのは、公募をかけている段階から決まってたんですか?

稗田さん「昨年度の段階で外側を検討しつつ内側をどうしようかということで、検討業務の業者さんと一緒に作り上げていった感じですかね。」

----当たり前に考えると、バスなので別に一緒でいいと感じますが、バラバラにしようっていうのはおもしろいんじゃないかという話があったのですか?

稗田さん「そうですね。毎日どの車両が来るかわからないという楽しみがあるのではないかと思います。学校とか職場に行って話題にしてもらえたら嬉しいですね。検討しているときに、社内の同年代の方とかに意見を聞いたりして、派手すぎて乗りにくいから色味落としてとか、シートも特注で作ってもらうまでにこれをベースに3枚くらい出してもらって、ちょっとずつ色味が違うものを出してもらったりして、その中で決めていきました。
実際これを施工していくうえで、この配置は多いから少なくとか、こっちのほうが和みやすいからトーンを落としてなどやりとりしながら作り上げています。」

2019_0314_0038.jpg今や大阪ではデフォルトとなった4ヶ国語表記にも対応。

----実際、乗車された方の感想が楽しみですね。今回、これは実験ということですが、利用客の数でやめるという判断もあるのでしょうか?

稗田さん「あくまでも社会実験なのでその可能性はあります。」

赤木さん「運行開始から3年程度経過時に効果検証し、そこで予想より少なければもう少し掘り起こしを施した上で、さらに運行開始から5年程度経過時にもう一度検証してその後の方針はその時に判断して実績を見ながらとなります。極端な話5年でなくなることもありますし、形を変えて同じような系統が残っていくことも可能性としてはあります。」

----そうですね、そのための実験ですよね。とはいえ、やりましたダメでしたではなく、そのための需要喚起は行なっていくわけですよね。まだまだ始まったばかりですが、新しい動きに注目していきたいと思います。

▶ほかの内装については以下をご覧ください。

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Osaka Metro
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