スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

社局のお仕事

第18回 ケーブルカー・ロープウェイのお仕事

  • 京福電気鉄道

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第18回は、日常から少し離れ、観光利用などが多いロープウェイのお仕事をご紹介します。取材に伺った時期はちょうど冬の運休期間。春の運行開始に向けて、整備点検の日々。そんな運休期間のお仕事について鉄道部の野々村洋一さんと鎌田博之さんに伺いました。

----早速なのですが、鎌田さんは鉄道部技術課鋼索係長と名刺に書かれておりますが、これはどういう役職になるのでしょうか?

鎌田さん「鋼索係といいまして、ケーブルカーとロープウェイの運営に関わっています。そこの管理者、監督者ですね。」

----統括をされていると?

鎌田さん「はいそうですね。係員の管理、指導を行っています。」

野々村さん「京福電鉄の組織を説明させて頂くと鉄道部には運輸課と技術課があります。運輸課というのは嵐山を走る路面電車の運転及び駅を担当していまして、技術課というのは嵐山線の電気保線車両の保守を行う施設係と車両係があり、さらに私たちの鋼索係があります。
鋼索係は比叡山にあるケーブルカーとロープウェイの運転及び保守を担当しています。それをまとめて鉄道部となります。」

----なるほど。鎌田さんは現在、入社何年になるのですか?

鎌田さん「26年です。もともとは嵐山線の電気係におりました。そこに3年近くいまして、その後鋼索係に5~6年。再び電気係に行き、今から10年くらい前に鋼索係にまたまた戻り、嵐山線とこちらを行き来していました。それでもこちらでは一番長いですね。」

2019_0207_0085.jpgワイパーなどの点検風景。ちなみに、叡山ケーブルの形が綺麗な平行四辺形なため、関東の小学校から授業に使用するため、写真の提供依頼が来たことも。

----野々村さんはいかがですか?

野々村さん「私は入社して21年です。総合職での入社でした。その頃は福井にも鉄道部があり、最初はそちらの車両係に配属され、5年勤務しておりました。その後、京都の嵐山線の電気係に異動になりまして、その時に鎌田さんとは同じ職場でした。ここにきては、5~6年ですかね。」

----そうしたら、お二人の付き合いは随分長いわけですね。鋼索係の皆さんは、どのようなお仕事を?

野々村さん「整備点検もそうですし、改札やご案内などのお客様とのやりとりも行います。運転もしますし、全部ですね。」

鎌田さん「スキルは求められると思います。」

野々村さん「嵐山線(嵐電)に比べて所帯は小さいんです。嵐山線は運輸と技術で係が分かれていますが、鋼索線(叡山ケーブルカー・ロープウェイ)はそれを全部ひとつの係でやりますので、いろんな仕事ができます。」

鎌田さん「そうですね。いろんなスキルが身につきます。ただ、どうしても人数が少ないので、大がかりなものになってくると嵐山線の技術に助けてもらうこともあります。」

2019_0207_0161.jpgこちらは運転用のハンドルではなく、車体を線路に固定するために締める固定具を動かすハンドル。

----冬の間は運休期間ということですが、みなさんの勤務時間は? また、どのような仕事をされているのでしょう?

野々村さん「営業期間中はシフト制で早出遅出があり順番で回っていくのですが、運休期間中は日勤となります。基本的にメンテナンス中心で、あとは大きな工事は冬にしかできないのでこの時期にやっています。」

----どのような工事があるのですか?

野々村さん「ケーブルカーは普通の電車と違い、車両を引っ張り上げるモーターなどの機械に加えて運転台も山上の駅にあるんです。ですので、モーターなどの更新工事は、その間運転できなくなるので営業中はできません。」

鎌田さん「もともとスキー場もあったので、昔は年中無休で営業していたため、その頃は閑散期に工事を行っていました。」

野々村さん「ここは冬が休みなので、それにあわせて工事をするということです。冬はそういう作業もありますが、シフトの調整もしています。これは、年間休日が全社同じ日数なのですが、ここは営業期間中、3日働いたら1日休みというシフトなので、そうなると出勤日数が他の部署より多くなるので、その分冬の間に休みを多くして調整します。
この時期だと月曜日から金曜日までフルで出勤というのはなく、月曜日から木曜日まで働いて金曜日が休みなど、休みを調整する期間でもあるのです。これを変形労働制といいます。また、営業期間中は3日出勤し1日休みというシフトが続くので、連休はありませんが、冬は逆に4連休などが続きます。」

2019_0207_0132.jpg安全のためのヘルメット以外にも、さまざまな工具を身につけて冬の点検に。取材時は2018年度採用の方も含め、若手3名をベテラン2名が指導しつつ作業が行われていた。

----大きな工事以外にこの時期でないとできないというのは?

野々村さん「大きな検査ですね。検査も他の鉄道と同じで例えば1年検査や全般検査などの大きい検査は冬に行うという流れです。冬休みだからといって遊んでいるわけではなく、むしろ忙しいという感じです(笑)。」

----重要な期間であるということですね。

野々村さん「新たなシーズンを万全の体制で迎えるための準備期間です。」

----これこそ人が見ない場面ですね。

野々村さん「運休してたら仕事も休みと思われるんですけど。」

鎌田さん「場所が比叡山なので、冬には雪が積もります。そのため山上に行くことができず、工事が予定通りに進まないことが多いです。」

野々村さん「雪が積もって、新しい機械が山上の駅に運べないとか、そもそも係員が行けないとかで予定が延びて、運行再開予定日ぎりぎりまで作業が掛かってしまうこともあります。」

2019_0207_0180.jpg叡山ケーブルは山下駅でもケーブルカーを動かすことが可能。これがあることで、それまで車で山上駅の運転台まで登り降りなければならなかったのが、この機器を利用することで登り降りができるようになり、車での事故の心配がなくなったという。

----自然の事は調整も効きませんし、なかなか大変ですね。ちなみにこちらには何人の職員の方がいらっしゃいますか?

野々村さん「私を含めて職員が全部で6名です。あとは嘱託職員が2人います。基本的にケーブルカーの乗務員、ロープウェイの上下駅に係員がいるんですけど、それはアルバイトさんが担当していて、職員はケーブルカーの運転ですね。あとケーブルカーとロープウェイのメンテナンスが中心です。アルバイトさんが全部で14、5人ほどおられますのでアルバイトさんのほうが職員よりも多い状況です。
普段ケーブルカーに乗る乗務員は、アルバイトさんですね。ロープウェイの運転や上下の駅の取り扱いもアルバイトさんでやってます。というのも運転業務が、昔は電車と同じようにノッチとハンドルがあったのですが、今は自動運転となり、ボタン操作で自動的に動いて止まるという運転方式にケーブルカーもロープウェイも両方とも変わったんです。そのような経緯もあって、アルバイトでも訓練すれば運転できるということもあり、特にロープウェイではアルバイトが運転を行っています。」

----それは驚きです! 免許はあるのですか?

野々村さん「電車と違って国家試験はないですが、社内試験で合格すればOKと言う形です。」

----各社の規定で、国の規定はないということですね。

野々村さん「ケーブルカーとロープウェイに関して国の規定はないですね。手動運転だった昔は大変でしたが、今は加減速の調整はコンピューターが全部やってくれます。運転者が、運転盤のボタンを順番に押していけば動きます。」

2019_0207_0229.jpg点検はパンタグラフまで。

----いつから自動になったのでしょうか?

野々村さん「ロープウェイは平成22年3月、ケーブルカーは平成28年3月ですね。」

----仕事は随分楽になりましたか?

野々村さん「手動運転の時は職人技みたいなところがあるのでなかなか習得が難しかったのですが、自動運転ではボタン操作なので操作さえ間違えなければれば動いて止まってくれるので、そういった点で運転者の負担は軽減されていると思います。」

鎌田さん「手動に比べたら格段にストレスもないですね。」

----習得に時間がかかることもなくなり、訓練時間も減ったというわけですか?

野々村さん「そうですね。しかし、その分他の訓練をきちっと行なっています。ロープウェイでは年1回救助訓練をしまして、そこでは実際にゴンドラを駅から少し出しまして、そこで動けなくなったという想定でアルバイトさんも交えて訓練を行っています。」

鎌田さん「お客様にゴンドラ内にあるレバーを引いてもらうと救出用の紐が下に落ちるので、その紐をつたって救助員が上がっていきます。」

----ロープウェイでは高低差がすごいところもありますよね。

野々村さん「ロープウェイでは高いところでも20メートルはなく、14、5メートルくらいです。籠のような救助袋がゴンドラ内にありまして、それをゴンドラ内の滑車を使いお客様を下ろしていきます。そのため一人ずつしか救出はできないのです。」

2019_0207_0277.jpgケーブルカーにしか使われない器具。大きくかなりの重量。

----そんな訓練もされているんですね!

野々村さん「はい、年1回3月頃に。あとケーブルカーも、途中で止まったという想定で軌道を歩いて駅までいく訓練も行います。軌道の横に階段がついていますのでそこを歩いて。」

----結構しんどそうですね。

野々村さん「はい。傾斜があるのでしんどいですね。」

鎌田さん「勾配がきついので余計です。」

----軌道点検は毎月ですか??

野々村さん「はい。軌道横の階段を使いますが、どうしても上がるのは大変なので山上駅から降りていきます。それでも足に負担はかかりますけど。」

鎌田さん「レールやボルトに緩みがないか、ロープが掛かっている導輪の状態などを見ながら回ってます。ほかにも沿線に物が落ちてないかなどの点検や、木を切ったりもしていきますので、2~3時間はかかってきます。昼から降りて4時半くらいになってるかなって。」

野々村さん「去年は台風が多かったので、通過後の点検で木が倒れているところを下から上がって切りながら歩くということもありました。」

----ちなみに、去年の台風のときはどうだったのですか?

野々村さん「運休です。9月の台風21号の時は倒木も多く撤去作業のため4日間休みました。」

2019_0207_0338.jpg左が野々村さん。右が鎌田さん。

----こちらも大変だったんですね。話は変わりますが、特別な運行などはあるのでしょうか?

野々村さん「お正月運転ですね。お正月の3日間は運転をします。特に元旦は早朝運転をします。比叡山山頂では初日の出が琵琶湖を挟んだ東側から上がってくるので、それをご覧いただくための早朝運転をしています。また、3日間通して延暦寺への初詣のお客様も多いです。」

----初日の出に間に合うってことはとても早いですよね。

野々村さん「ケーブルカーは6時5分が始発になります。普段は9時が始発なんですが、日の出が7時頃ですので、それに間に合うように。」

----どのくらいの人数が利用なられますか?

野々村さん「毎年100人くらいですね。山頂にガーデンミュージアム比叡という施設があってそこも冬はお休みなんですけど、その時だけ開けて頂いて。見晴らしがいいので、そこから初日の出を見ていただくということをやっています。」

----それでは逆に毎日のお仕事の話なんですが、今日は何をされてますか?

野々村さん「今日はケーブルカーの1年検査を行っています。項目がいっぱいありますので、運休期間中に順番にやっていきます。」

----検査する車両は何両あるんですか?

野々村さん「全部で2両です。また、山上駅にあるモーターが予備と合わせて2台あり、1台が故障などで動かなくなってももう1台で動かせるようになっています。ロープウェイも同じようにモーターが1台あって、あと予備原動機というモーターの役目をする機械がついてます。故障があれば切り替えます。これらも検査します。」

2019_0207_0019.jpg特殊な工具を使ってタイヤの直径も点検。その際、データを取ることも忘れてはいけない。

----車両は新しくなったりしているのでしょうか?

野々村さん「ケーブルカーはなかなか更新というのがなくて、ケーブルカーの車体が昭和62年製です。台車はそれよりもっと古いです。ロープウェイは平成10年製です。」

鎌田さん「車両の空気配管等は数年前に更新しました。」

野々村さん「台車が古いのは普通の電車と違い、特に台車はちょっと特殊で、国内でなかなか作れないらしく、更新が難しいです。久しぶりに高野山ケーブルが台車まで含めて更新されますが、台車はスイス製だと聞いています。」

鎌田さん「以前あった創業時の巻上機はスイス製だったんです。勾配がきついので、その当時最先端のスイス人技術者を連れてきて、カーブで登ればいいんじゃないかと言う話でスイス製の導入が決まったと聞いています。」

野々村さん「ここは大正14年にできているので、当時の技術は日本よりヨーロッパの方が進んでいました。」

鎌田さん「当時のスイスの社名の入った減速機のフタが山頂に飾ってあるんですけど。」

野々村さん「大正14年なので、まだ日本では九州の八幡製鉄所ができて間もないくらいの時代でした。そのような時代でしたので外国の技術を取り入れながら、近畿圏のケーブルカーは90年を超えて営業を続けていて、一番古いのは近鉄の生駒ケーブルが100年を超えています。」

----100年超えはすごいですね!

鎌田さん「ほかにもケーブルカーはあるのですが、それぞれ規格が違うんです。物や部品は共有できず、それぞれ山の勾配などが異なりますので、それに合うように設計されていました。」

----すべてが特注ということですね。

鎌田さん「どこもサイズが違うので自前でするしかないよねって。」

----最後に、このお仕事の醍醐味をお聞きしたいのですが。

鎌田さん「型にとらわれないというか、決まった仕事ではあるんですが、その幅が広いところと、いろんな経験ができて、普段でもお客様対応もしますので、後は技術的なことで自分の技術スキルを、どう伸ばせるかというところだと思います。"ありがとう"って言って帰られるお客様の言葉が一番嬉しいですね。気分良く帰っていただければ自分も良い気持ちになりますから。」

野々村さん「私は京都側から世界遺産の延暦寺に行ける重要なルートで、お客様を運ぶ事業に携わっているということがすごく光栄です。もちろん安全確保を第一に考え、業務に取り組まないといけないという責任もあります。そういった事業に携わっているということに、やりがいを感じます。」

2019_0207_0287.jpg

京福電気鉄道
http://www.keifuku.co.jp

叡山ケーブル・ロープウェイNEWS
3月21日(木)から新キャラクター・八瀬かえでが誕生!

ケーブル八瀬駅では、クリアファイル(500円)、缶バッジ(300円)など八瀬かえでグッズを発売。 また、八瀬かえで等身大パネル(記念撮影用)をケーブル八瀬駅・ケーブル比叡駅に設置されるのでぜひこの機会にお出かけください。

kaede_illust.jpg