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社局のお仕事

第16回 神戸市営地下鉄西神・山手線でのお仕事と新型車両

  • 神戸市営地下鉄

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第16回は、25年振りに新車両を導入する神戸市営地下鉄の西神・山手線のお仕事をご紹介します。お話いただくのは、名谷管区駅長の阪上和也さん、地下鉄車両課の車両更新担当係長の多田暁さんと同じく地下鉄車両課の安達充洋さん。新車両導入に向けた舞台裏に加えて、設計に際してメンテナンスに向けた細かな配慮まで、乗っただけではわからない工夫についても伺いました。

----新車両のお話をお伺いできるとのことで、今日はよろしくお願いいたします。まずは、みなさんの普段の仕事についてお聞かせください。

阪上さん「神戸市営地下鉄の西神・山手線というのは、全部で16駅あるのですが、私は名谷駅から上沢駅の6駅を所管しており、そこの駅長をさせていただいております。車両などをハードとすると私はお客様への対応やソフト面を担っています。」

----普段はどちらでお仕事をされているのでしょうか?

阪上さん「普段は、名谷駅にいます。車庫には、研修などの場合に来ることが多いです。先日、新型車両6000形を導入するにあたって、研修が必要でしたので、そのために来ていました。」

2018_1219_0027.jpg今回取材に答えてくださった(左から)安達充洋さん、多田暁さん、阪上和也さん。

----多田さんと安達さんは地下鉄車両課ですが、基本的にはこの車庫でメンテナンスや検査の仕事ということになりますか?

安達さん「そうですね。」

----いよいよ新車両が走るということですが、今回どういった経緯で新車両を製造することになったのか、お聞かせいただけませんか?

多田さん「新車両についての計画は、実はずっと前からありました。といいますのも、現在走っている車両で古いものは40年前のものとなります。新しい車両への入れ替えと、ホームドアの設置を進めており、このタイミングで一気にという話になったわけです。ホームドアの設置に向けては、車両の停車位置など精度を上げる必要もありましたので、同時に進めていこうと。これまではある一定数の車両を順番に購入して交換するということだったのですが、今回は一気にやろうと。」

----なるほど。

多田さん「この話は、私が今の役職、地下鉄車両課の車両更新担当係長になってから本格的に始動したという流れです。」

----そうだったのですね。

多田さん「私の役職は新設されたものなのですが、この役職ができるまでは、大まかな計画はありましたが、期限や具体的な話まで確定はできていませんでしたので、ようやく決まったという感じでした。」

2018_1219_0187.jpg新車両のデザインは、3案から市民、乗客の投票によって決められた。ほかのデザイン案には、前面が真っ黒な斬新なものも。

----計画が決まってから次に行ったことは何でしょうか?

多田さん「最初は、一括で買い換えるのか、順次入れ替えながらやっていくのか、それを決めました。」

----一括で買うというのは、どういう流れで?

多田さん「一括で買い換えるためのメリットを局内でプレゼンしまして、その上で一括の方が効率的だということをご理解いただきました。」

----先ほど40年前のものが一番古いというお話でしたが、新しい車両というのもあるんですよね?

多田さん「はい。平成6年のものもあります。ただし、他の車両は主要な装置を更新しているのですが、平成6年製造の車両は装置更新をおこなっていません。そこで、それらも含め、一気にというのが今回のやり方。全車両を統一することで生まれてくるメリットがあるということです。」

2018_1219_0204.jpg神戸市営地下鉄の海岸線の車庫は地下にあるが西神・山手線は地上に。阪上和也さん、多田暁さん、安達充洋さんの後ろ右手に停車しているのが1000形の旧車両。それと比べても前面の窓が広がったのがよくわかる。

----神戸市営地下鉄(西神・山手線)には何両あるのでしょうか?

多田さん「1編成6両で、28編成あります。」

----これは一度に納品されるわけではないですよね?

多田さん「今年度、2編成入りまして、来年度以降4年で26編成入ってきます。」

----5年間で全てが新しくなるわけですね。その新車両の特徴を教えてもらえますか?

多田さん「まず、車両の顔ともいえる外観は、市民、利用者の方の意見を取り入れたいなと思っていましたので、漠然とした質問を投げかけるのではなく、具体的にデザインを3案作らせてもらい、それに投票をしていただきました。僅差で今回のデザインに決まりました。」

2018_1219_0420.jpg新車両の車内。窓が広く取られていて、明るく車内が広く感じられる。グリーンのシートも鮮やか。

----外観についてのこだわりなどありましたでしょうか?

多田さん「見た目でいいますと、丸みを帯びさせているところです。あと、機器関係で前方のライトや行き先の表示をすべてLEDに変更して、省エネ、長寿命を実現しています。」

----車内についてはいかがですか?

多田さん「窓を大きくとって、広さを演出しています。設備品は大型の袖仕切りをつけたり、縦の握り棒を設置したりしています。座席については窪みのあるシートを採用して、定員着座をしていただけるようにと工夫しています。そのために今までの規定幅を広げるという変更も加えています。」

----その幅は自由に変えられるものなのでしょうか?

多田さん「そうですね。こちらはメーカーの規定サイズということではなく、車両ごとに変更をしていけます。」

----広々とした印象がありますが、車両の幅も変わっているのでしょうか?

多田さん「いえ、同じなんです。窓についてもそういった印象を与えてくれるところかと思いますが、座席下の蹴込板を無くしているので床が広くみえています。車両と車両の連結部も全面ガラスにしたので、そういったところも広さを感じてもらえる要素になっているのかなと思います。」

2018_1219_0478.jpg韓国語、簡体字、英語、日本語の4カ国語表記。左の画面にはCMほかお知らせなどが表示される予定。

----同じ幅とは思いませんでした。随分変わりましたね。

多田さん「車内の表示についても4言語対応をし、開くドアの案内のほか駅の階段位置案内、ほかにもグローバル対応やバリアフリーへの配慮も行なっています。車両の高さをホームと合わせることを実施しました。混雑具合によって高さが変わってしまいますので、いつも同じ高さというわけではないのですが、車椅子でスロープなど使わずに乗降していただくことが、可能になったところもあります。」

----そういった点も今回改善がされているんですね。

多田さん「扉にも工夫をしており、扉を閉める力を弱くする機能を導入することで、細いものでも挟まっていると検知するような仕組み作りをおこないました。例えば傘のような細いものの場合、扉を閉める力が強くて閉まりきってしまい、検知せずに走行してしまう可能性がありましたが、今回は、そういったことが起こっても傘を引っ張ったり、動かしたりすることで検知されるような仕組みになっています。ですので、挟まれている時点で気づくような仕組みもありますが、もし気づけなくても、それが動かされることで検知可能なシステムになり、何かを挟んだまま走るといった事故をこれまでよりも防止できるようになっています。」

----一生懸命引っ張ったりすることで、たとえ抜けなくても挟まっていることが伝われば、扉を開けて対応することができますね。そのほかにも、技術的な変化は?

多田さん「車両を動かす心臓部とも言える機器を最新のものにしています。そのほかにも電線に流れている電力、つまり、直流電力を、車内で使用するために交流に変換する機器も変更しました。それも省エネのタイプにしています。少しずつではありますが全体的に省エネを達成しているということです。ですので、何かに特化したというよりもバランスよく全体的に底上げをしたということになります。」

2018_1219_0191.jpgボディのシルバーは車体そのものの色。緑のラインは塗装ではなくシール。神戸市営地下鉄の緑を踏襲しつつも鮮やかなグリーンが今回採用されている。

----数値的にはどのくらいの省エネになりますか?

多田さん「まだお客さまを乗せて走ってはいないので、従来車と比べての数値を出せるわけではまだありません。また、実はこれまでの車両も決して省エネが進んでいないというわけではありませんでした。かなり省エネな車両ですので、それと比較して驚くほどの数値になることはないと思います。これまでの機器と比べて、1割から2割程度は省エネになるという見込みです。」

----そうなんですね。それでは、今回の新車両導入の中で苦労されたことは?

多田さん「やはり、一括で車両を導入するか、これまでのように徐々に変更していくのか。それを局内でどう理解を得ていくのか、また、予算取りをしていくのかというところが一番頭を悩ませました。」

----どのように理解をしてもらったのですか?

多田さん「とにかくメリットを説明して、一括でやるとこんなにいいんだというプレゼンをさせていただきました。お金の面が一番大きいですが、それ以外にも装置の古さや、バリアフリーへの対応ができていなかったのができるようになるなどですね。」

2018_1219_0545.jpg「新車両にすることで機器も新しくなり、音も随分静かになりました」と安達さん。

----決定までどのくらいの時間を要したのでしょうか?

多田さん「およそ半年です。予算の確定までに決める必要がありましたので、それまでの期間が約半年だったということです。」

----合意が得られた次にどういうことを決めるのでしょうか?

多田さん「次に決めるのが、どのような車両を作るか、です。そこで、いろんな資料を見たり、他の鉄道事業者の車両を見に行ったりしました。そして、神戸市営地下鉄の車両としてどういったものがいいのか、検討していきました。そのうえで、おおよその仕様を決めて発注という流れになります。」

----夢が膨らみますね。

多田さん「入札ののちに受注していただいた事業者さんと詳細を考えていく会議は朝から夕方くらいまでやっていました。」

----長いですねぇ(笑)。

多田さん「デザインにしても機器にしても、ひとつひとつ詳細を決めていきますので、時間がかかります。そこから、実際電車を製造して出来上がっても試運転をしないといけません。納車された後も初めは営業時間中には試運転できませんので、営業終了後の深夜にやるんです。そこで不具合がないかなど確認していきます。」

----その試運転では具体的にはどういうところをチェックされるのでしょうか?

多田さん「まずは車両がカーブを曲がるときにセンサーにより得られた数値が安全な値であるか、脱線することなく走れるのかを西神中央駅から新神戸駅まで走らせて確認します。次に安全面で言いますと、ブレーキです。規定のブレーキ力が出せているのかを確認します。そのほかには、加速で規定の数値が出せているのか、走っている中で機器からデータをとっておかしな挙動が出ていないかなど細かくテストします。」

2018_1219_0334.jpg運転席は黒で統一されシックな車内に。スイッチやベルといったものは以前と同じ位置に設置され慣れ親しんだ場所での使いやすさを重視された運転しやすいデザインも意識されている。ちなみに、ベルの形状と音は昔のまま。

----仮にこのテストで不具合などがあれば、再度工場に戻すのでしょうか?

多田さん「工場に戻さないとどうしようもない場合は、運び込んでということになりますが、実際にそういうことはなくブレーキ力の調整などは、車庫で行います。ブレーキは数値が出ているけれども乗り心地が悪いというのも困りますので、そういった調整も行います。」

----なるほど。数値のみをみているわけではなく人の感覚というところも大事だということですね。となると結構、細かく何度も調整されるわけですか?

多田さん「そうですね。地下鉄車両課からは2名、メーカーの方も車両に分かれて、多い時には10名ほど来られまして、試運転を行います。それぞれ機器が異なった車両についておりますので、機器のメーカーごとに乗り込む車両が違います。私たちは運転士とともに運転台に乗ることが多いです。」

----なかなかそういった機会に巡り合うことはないでしょうし、おもしろそうというのは語弊があるかもしれませんが、体験してみたいです。

多田さん「そうですね。私達でもなかなかありませんので、貴重な機会だったと思います。」

2018_1219_0526.jpg中央に見える棒のようなものは、梯子の一部で緊急時前方から車外に降りられるようにコンパクトな梯子が設置されている。これも地下などで壁沿いを走ることの多い地下鉄ならではの工夫。

----話は変わりますが、納車された時、どんなお気持ちでしたか?

多田さん「実は納車をすごく楽しみにしていました。派手とまではいかないものの、気持ちの中で来るものがあるだろうと。でも実際は、結構淡々としていたと言いますか、トレーラーに引っ張られて、1台ずつスーッと運ばれてきまして。こんなものかなぁと(笑)。」

安達さん「台車の部分と車体の部分と分離されるようになっていますので、それが分かれてやってくるんです。でも、テープカットもしませんし(笑)。」

一同 笑

多田さん「その納車から結構日数がたっていますが、今のところ大きな問題はなく進んでいます。」

阪上さん「私は今まさに試運転を乗務員とともにやっている最中で、運転してきました。すごく運転しやすい電車だなと思いました。」

----運転しやすい、というのはどういう意味でしょうか?

阪上さん「電車によって癖があります。同じ1000形、2000形にしても理論値は同じなのですが、ブレーキを自分が思っている通り入れていても急に緩まるような感覚があったり。でも先週に新車両に乗らせてもらうとそういうことはなく、非常に素直な車両という印象がありました。運転士しかわからないマニアックな話なのですが(笑)。」

----運転している人にしかわからない違いというのが、やはりあるんですね。興味深いです。

阪上さん「神戸市営地下鉄 の西神・山手線の車両のブレーキは1から7ステップ(数値が上がるとブレーキが強く働く)まであるのですが、例えば、5くらいで止まるなという速度でも、先ほどもお話ししたブレーキが緩むような車両だと6、7と最後にあげなくてはいけなくなることがあります。それが、新車両にはなく、5で止まると思ったらちゃんと5で止まってくれる。そういう意味で素直な車両ということです。」

----運転士の思ったイメージでブレーキが効いてくれると。

阪上さん「そうです。」

----でも実際、そういう感覚的なところも大事ですよね。

阪上さん「ほかにも、運転しやすいようにボタンの配置なども考えられていますし、細部にまで愛情を込めて作ってもらっていると思います。」

----最後に安達さんは、入局5年目にして新車両の設計に携わったわけですがいかがでしたか?

安達さん「私はもともとメンテナンスを行う部署にいましたので、その経験を生かして、メンテナンスをする際にどうすればやりやすいかをみて打ち合わせなどに出ていました。ひとつ例に出すと、足元のヒーターを止めているビスがあるのですが、そのヒーターを取り外ししようと思うと、寝転んだ体勢で取り外して、手探りでネジの位置を確かめたりしないといけないこともありましたので、少し緩めるだけで取り外しができるように変更をお願いしたりしました。」

2018_1219_0309.jpg話に出たネジがこちら。ヒーターの取り外しの際に取り去らずとも外れるようにスライド式になっている。

----それぞれの役割がきちんと生かされた設計になっているわけですね。その車両がいつ頃から実際走るのでしょうか?

多田さん「2月中旬以降からお客様を乗せての運行になる予定です。」

----それはもうすぐですね。たのしみにしています。今日はどうもありがとうございました。

神戸市営地下鉄
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神戸市営地下鉄(海岸線・御崎車両基地のお仕事)
http://www.surutto.com/asobonweb/info/misaki.html