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社局のお仕事

第14回 神姫バス バス車両のLED表示取り組みと営業課のお仕事

  • 神姫バス

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第14回は、2017年8月に創業90周年を迎えた神姫バス。その90周年を機に始まった独自性の高いLED表示の取り組みを中心に営業課の佐藤さんと宮本さんにお話を伺います。バスの前面にある路線や目的地を示すLED表示に"回送"と事務的な言葉ではなく、"回送中です"というちょっとした変化をつけたところ神姫バスのお客さんを中心にSNSの投稿が多数。そんな盛り上がりとその後について、神姫バスの社風にも言及していただいています。

----まず、神姫バスさんといえば独自性のある試みをよくされているという印象で、今日、お話を聞かせていただくLED表示以外にも観光バスでお客さんがバスガイドになれる企画やバスを運転できるという体験会などもされていて、いい意味でおもしろい会社だという印象があります。

佐藤さん「ありがとうございます。そもそも交通機関というのは、安全な運行を心がけています。そういったことから堅いイメージといいますか、マジメな風潮があると思います。しかし、我々はバス事業を90年以上やってきており、安全がベースにあるのは当然のことなのですが、近年、人口減少が叫ばれる中、バスに注目していただく取り組みを少しでも行なっていかないといけないという雰囲気もあります。」

----そういう時代の流れというものも影響をしているんですね。

佐藤さん「うちは毎年一定数新入社員を採用していますので、若い社員がたくさんおります。その中でマジメだけじゃなく、マジメ+おもしろいことをどのようにやってみるかということで、アイデアが出やすいようにはなっていると思います。ですので、今回お話するLEDなど、おもしろいことをやってみようという雰囲気は昔からありました。だから、表示に回送と書かれているのをアレンジして、"すみません回送中です"と試しに出して走らせてみるなんてことを実は15~16年前からやってはいたんです。」

----そうなんですね! 最近のことかと思っていました。

佐藤さん「海外では"Sorry~"みたいな表示に変えるというのは前からありまして。乗務員が海外でこんなのを見たと言っていて、そうしたら今度やってみたらどうだろう、となりまして1度やってみました。しかし、 当時はまだそれを走らせてみる雰囲気はなくて、試しでやってみただけでした。」

2018_1120_0030.jpg今回お話を伺った佐藤さん(左)と実際に表示の内容を考えた宮本さん(右)。ちなみに、佐藤さんは、小さな頃から乗り物が好きだったこともあり、馴染みのあった神姫バスに入社。宮本さんは営業課に来てまだ半年ながら、佐藤さんとの息はバッチリ?

----実験的な試みだったわけですか。その後、時代の流れの中で、社内の雰囲気も変化があったという。

佐藤さん「そうなんです。先ほども申しましたように、社内的に新しいアイデアを受け入れるという雰囲気はあったのですが、新しい取り組みなどをPRすることがなかなか得意ではなくて、だからこそ、そこをもっと変えて自分たちから発信していかないといけないと。そこで、LEDを使ってみました。最近は全国的に広がってきてはいるんです。"すみません回送中です"というのは、うちが初めてだという専らのうわさですけど(笑)」

----でも何故LED表示を変えてみようということになったのでしょう?

佐藤さん「きっかけは去年の8月です。会社が90周年を迎えまして、それをいかに知ってもらうか、お客様にこれまで培った歴史をどのような形で伝えるのかということが議題にあがりました。そこで、90周年の検討委員会を立ち上げて、バス事業だけでなく、不動産など他の事業もおこなっておりますので、そういったさまざまな部署から人が集まりました。その中で比較的若い社員たちが行き先の表示板に、90周年のロゴをつけたらどうかと提案があり、それを採用したところ好評を得ましたので、そこからは、どちらかというと社風として調子にのってしまうところがありまして(笑)。そこからいろいろとやっていっているということです。」

----調子に乗ってしまう(笑)。ちなみに、その計画はどれくらい前から話し合いを?

佐藤さん「8ヶ月前に委員会を立ち上げました。」

2018_1120_0159.jpg現在、回送車はすべてこの表示。右の柄のように見えているのは、神姫バスのロゴの一部を拡大した模様。

----それでは、具体的にLEDに関して聞いていきたいのですが、90周年の時、そして、その後実際どんなものを表示するかというのはどのように決まったのでしょう?

佐藤さん「90周年のものはいくつも案を見たのちに、会議にかけられて最終的にいろんな部署の意見も聞いて決まりました。実際ほんとにシンプルに、"ありがとう90周年"みたいなものもあれば、今回決まったものもありますけど、色々紆余曲折あって、やるにあたって、単純に本社で決めてボンとやるわけにはいかないので、いろんな営業所も含めて聞いて、それでお客さんの反応で乗務員の影響がどうなるかわからないので、そのあたりの調整もしながらやってたんですけど、ただ90周年ってとこで何かメッセージを出すっていうのと、おもしろい事をやるっていうことに関しては、お互いみんな共通意識をもっていました。」

----LED表示は、保有されている全てのバスで実施したんでしょうか?

佐藤さん「そうです。約700台あるのですが、その中の路線バスと高速バス。高速バスはLEDのサイズが路線バスのものよりちょっと小さいんですよ。ですので、表示を調整していますが、基本同じものを全ての車両に。」

2018_1120_0081.jpgLED表示は専用のソフトを使って編集。ちなみにこちらは宮本さんのデスク。テキストを打ち込むことで表示を作成することもできるが、ドット絵のようにマスを選択することで柄や文字を作成することも可能。

----ご覧になったお客さんの反応はどうでしたか?

佐藤さん「"神姫バス90年なんや"や"そんなにやってたんや"というような反応をいただきました。正面は90周年のロゴですけど、側面はメッセージが書いてあるので、ああいうのを見て、ちょっと変わったことやっているって、TwitterなどのSNSでアップしてもらって、いい形で広がったなと思っています。企画段階では正直そこまでとは思っていませんでした。」

----見たら思わず言いたくなる感じです。SNSにもちょうどよかったんじゃないでしょうか。

佐藤さん「拡散しましたね(笑)。とはいえ90ってちょっと中途半端かなと思っていましたが、1つの節目で次の100周年に向けてこういうことできてよかったと思います。予想を超える反響をいただいたこともあり、90年目が終わってから普通に戻すのも期待はずれ? と社内で話し合い、"回送中です"というものを走らせ、バスの横の停留所を表示させる場所には新たな取り組みとして採用情報のメッセージを出しました。」

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2018_1120_0143.jpg11月末まで表示されていたアニメ「けものフレンズ」とのコラボレーション。姫路セントラルパーク行きと帰りで表示が違った。

----そういう流れだったんですね。

佐藤さん「乗務員不足はかなり深刻で、そのため運転体験会という催しをしています。」

----乗務員不足っていうのはなりたい方が減っているということでしょうか?

佐藤さん「減っているかもしれません。」

2018_1120_0243.jpg姫路駅前のバスロータリから続く姫路城前の様子。常に神姫バスが出入りし、町の足であることがわかる。姫路のみならず、三田、遠くは篠山方面もカバー。

----運転体験会というのは、具体的にどのようなことをされるんでしょうか?

佐藤さん「実際にバスを運転してもらうんです。バスの運転は普通運転士にならなければできないです。ですので、バスの運転士になってもらうためには、どんなものかを知ってもらうのが大事なことかなと、少しでもバスに興味を持っておられる方に乗ってもらって、運転士としてやっていけるかってところも見てもらって考えてほしいなということもありまして企画しました。公道ではない練習所で運転してもらいます。そうして、バスってこういうものなんだ、と理解してもらった後で、これだったら自分の仕事としてできるなって思ってもらえるかどうか、そういった取り組みを行っています。」

----体験された人の反応はどうですか?

佐藤さん「反応はおおむね良く、それをきっかけに実際受けられた方もおられます。女性の採用に結びつくケースもあります。」

illust.jpgデザイン性の高い会社案内。行動指針に書かれている「誠実に、果敢に、おもしろく」がまさに神姫バスがおこなっていること。イラストは神戸を中心に活躍する山内庸資さん。

----女性はそもそもバスの運転士という選択が、職業を選ぶ段階でなさそうなイメージですし、運転体験会のような機会があれば、意識も変わりそうですね。それにしても、実際にこの企画を実行に移せるのが神姫バスさんの特徴とも言えるような気がします。

一同 笑

----さて、LEDの話に戻って、90周年をやってみて、今後というのが期待というか、どうなるのかというのは知りたいところかと思いますが。

宮本さん「90周年を終えて、引き続きということになりましたので、実際表示をどうするかを考える担当者として、まずは社内で好きそうな人に意見を聞いてみました。会社がいまどういう状況か考えるのと同時に、世間で何を求められているのかをまとめて、いくつか案を考えて提案しました。そして今回、採用募集を表示するという形につなげていきました。」

----採用情報以外にも候補はあったんでしょうか?

宮本さん「10種類くらい案がありました。いろんな人に聞いたんですが、イメージがつきにくいということもあって、結局一人で考えたんですが...。」

2018_1120_0099.jpgこちらが宮本さんの考えたものの一部。全力でというのは、スピード感を連想させるため不採用になったそう。

----確かに、なかなか共同で考えるには、細かい作業ですね。ちなみに、決まったもの以外はどんな内容があったんでしょう?

宮本さん「(不採用となった案を見ながら)こんな感じです。エクセルで作りまして。」

----表示は何文字までいけるんでしょう?

宮本さん「何文字でもいいのですが、小さくなると見えないのであまり多くならないように考えます。」

----リズミカルなものもありますね。

2018_1120_0161.jpg回送車両の側面のLED表示。神姫バスでは大型免許取得の費用面、練習などもサポートする体制を取っている。そのため入社時に持っていなくとも安心。

佐藤さん「ほかにも、安心、安全というようなことを盛り込んでいるのは、バス会社感が出ていると思います。」

----確かにそうですね。言いがちと言うと失礼ですが。これはどれくらいの期間で考えてたんでしょう?

宮本さん「1週間くらいですかね。」

----柄のようなものもありますが。こういう柄も入れられるのですか?

宮本さん「ドット打ちですので時間さえかければ。」

佐藤さん「名刺と同じ柄なんですが、パッと見た感じだと何かわかりませんよね。これはもともと会社のマークの一部を拡大したものなのですが、それを知っているからわかりますが、わからないかもしれません一般の方は。でも、これを一つのデザインとして会社で認めてこれをOKにしているのは、安全を守りつつ地方のバス会社として地域にお住いの方々の交通手段になるだけではなく、デザイン性など次の一歩を見据えたいという気持ちも表しています。」

----なるほど。それでは、あと約10年ありますが、100周年に向けてさらなる一歩を踏み出しているわけですね。

佐藤さん「100周年に向けてどうやっていくのかということもありLED表示についてはそのことも念頭にありました。でもこれは逆にずっとやり続けないといけなくなるというプレッシャーでもあり(笑)。また、急におもしろくなくなったという評判になっても、と思うところもあり、実はハードルがだいぶあがりました。」

2018_1120_0157.jpg神姫バス内のドット絵職人が手がけた力作。少し読みにくいというツッコミも?

----今までは堅いイメージだったのに、おもしろいっていうイメージが定着すると、確かにかなり難しいところです。

佐藤さん「おもしろいからこそ、ベースとして私たちが守っていかないといけない"安心・安全"を、さらに意識付けをしていかないと、と思います。」

----"おもしろい"ができるのも真摯な姿勢といいますか、そこがあってこそということですね。100周年も期待しています。今日はありがとうございました。

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