スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

BRING BOOK STORE

13軒目

  • 和歌山県和歌山市
  • 和歌山バス

和歌山近代美術館内にある
私が偶然に出会える場所

古いものが好きだ。

映画、洋服、漆器、家具、家、車、そして本。古いものは角がとれていて、なおかつ質がいいものが多い。もう少し言えば、質がいいからこそ時を超え、今日まで残ってきているのだとも思う。
その中でも本に至っては、「私は、新刊はほぼ買いません」と断言できるくらいセカンドハンドを買う。仕事でどうしても読まなければならない資料はネットで古本を探す。さらに小さな子どもがいるから無理して都会に出かけることもなくなり、ますます都会の新刊を販売する書店に行く機会が減った。ネット上の買い物は便利だけれど、「これを買うつもりじゃなかったのに、何となく惹かれて買ってしまった」という偶然の出会いが私にはない。AIが選んでくれた最適なおすすめ本ではなくて、むしろいままでの自分では選びそうもなかった"ミスマッチ"なものにこそ、未来へのきざしがあるのに。偶発的な出会いが減ると、自分の芯がやせ細っていく感じもする。

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窓の外にはテラス席もあり、これまでに古本市などマーケットも開催。和歌山城が見える眺望も最高。

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左はスタッフの上出さん。「もともとイタリアンのレストランが入っていたため厨房が充実していて、
いろんなお菓子ができます」とのこと

と思っていた頃、和歌山にいい本に出会える店ができた。といっても、書店ではない。カフェなのだ。その名も「BRING BOOK STORE」。和歌山城の南にある和歌山県立近代美術館の中にある。この美術館は、メタボリズム建築の旗手黒川紀章氏の設計。一方、「BRING BOOK STORE」は対照的に古材をふんだんに使い、どこか学校のような懐かしい雰囲気に満ちている。天井まである大きな本棚は、佇まいの良い本たちで飾られている。

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クレームブリュレ(500円)とアメリカーノ(400円)。SWEETS SETだと870円に。
そのほか、季節のフルーツタルト(550円)なども

そのセレクトは「books+kotobanoie」(兵庫)「YUY BOOKS」(京都)「本屋プラグ」(和歌山)「居留守文庫」(大阪)といった個性派4店に委ねられている。「和歌山」をテーマにそれぞれの店主が肝いりで選んだ本はどれも圧倒的な存在感を放つ。どの本を手にするかで、自分のいまの関心事を客観的に測る鏡のようでもある。

そんな中、私が手にした本は「クストー海の百科 宇宙のオアシス」(平凡社)。クストーは1960年代から海の環境汚染を訴え続けてきたフランスの伝説的海洋学者。そしてもう一冊は、「熊野太地浦捕鯨乃話」(紀州人社)。海を守るか、それとも食べるか。国を超えて両国の海に対する眼差しが伺える。「相反する2つがひとつの本棚に並んでいるとは、何て自由なんだろう」と思う。ここはたった数時間、心が旅する場所。というわけで毎日の中で風が欲しくなったら、ついふらりと立ち寄ってしまうのだ。

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4店によるセレクトは、絵本あり、小説あり、実用書あり、とそれぞれお店のカラーも出たおもしろい書棚に。
閲覧のみ可能な本も一部あり

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こちらが、「クストー海の百科 宇宙のオアシス」の1ページ。和歌山と一口に言ってもさまざまな観点があることがこの本棚からは可視化され伝わってくる。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

BRING BOOK STOREHP

BRING BOOK STORE
交通
南海電車 和歌山市駅より和歌山バスにて県庁前停下車徒歩約3分
住所
和歌山県和歌山市吹上1-4-14
和歌山県立近代美術館2F
電話
073-425-4344
営業時間
11:00~17:00
※夏期(6月~9月)は夜営業(ビアガーデン)あり
定休日
月曜(月曜が祝日の場合は翌日)

著者プロフィール

ヘメンディンガー綾(へめんでぃんがー・あや)
編集者/ライター

地域情報誌、ファッション誌のエディターを経てフリーに。2009年にUターンし、関西を拠点にアート、デザイン、暮らし、ソーシャルイノベーションなどの分野で執筆・編集に携わる。和歌山の若者と街をつなぐ「ARCADE PROJECT」実行委員。