スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

blackbird books

8軒目

  • 大阪府豊中市
  • 北大阪急行

緑と花と地続きの、心地よい本屋さん

大阪・緑地公園のほど近く、北摂の住宅街に静かに溶け込むように佇む書店「blackbird books」。ここにはじめて立ち寄ったとき、私が購入したのは本ではなかった。手にしたのは小さなシャーレに入ったかわいらしいミモザ。ここは書店ではあるが、店内を囲む本棚や天井にはドライフラワーが飾られ、植物の販売も行なっている。大きなガラス張りの路面にあって、明るい光が差し込む。そして、すっきりと、しかし濃厚な密度で収められた本棚には、新刊書籍と古書が並んでいる。なにより小説や絵本や料理書、写真集のほかリトルプレスの充実に驚いた。こんなところに…と言っては失礼な話だが、都心の書店でもこれだけのセレクトはなかなか見かけない。ひとしきり本を物色したのち、服部緑地の植物園からそのまま地続きになったような心地よさに満足し、その日はミモザだけを購入して帰ったのだった。

窓際の棚には、全国のリトルプレスやZINEが。
お昼過ぎに見られる下校途中の小学生たちの姿も、ここならではの穏やかな光景だ。

実はここでは月に一度、店主・吉川さんの奥様による花店「note」も開店しており、常時販売している植物も「note」のセレクト。店内で、まるで自然の中で聞こえる音のように微かに流れる音楽は、レジ横のターンテーブルから発せられている。店主が音楽好きであることは壁に飾られたレコードやポスターからもわかる。そういえば店名はビートルズの楽曲から取ったのだろうか(確認したことはないが)。と、こんなふうに書いていると、よくあるセレクトショップのように思われるかもしれないが、ここの本棚には本屋としての確かな矜持が感じられる。本が好きな人がやっている本屋さん。そして、そこに住む人たちに開かれた本屋さん。ちなみに店内の大きな本棚は、大阪・南船場にあった書店「ベルリンブックス」(現在は京町堀に移転し不定期営業)から譲り受けたものだったりする。

店内奥の壁では作家の展示も。取材時は、ZINE作家 michi-siruveこと藤田理代さんの豆本詩集の展示と販売が。

レジカウンター横には、最近導入したというコーヒーサーバー(1杯250円)。コーヒー片手に店主と立ち話、なんてお客さんの姿も。ビール(500円)もあります!

関西圏外などかなり遠方からわざわざ来られるお客さんもいるそうだが、夕飯の買い物帰りの主婦や子どもなど、近隣の住民も訪れる。アートブックに混じって本棚に並ぶ絵本や料理書は、ファミリー層も多い土地柄を反映しているのだろう。以前、たまたま店内にいたときに来られた買取り依頼のお客さんは、部屋着のような格好のおじさんだった。近所にこうした本屋さんがあるのは幸せなことだし、これからもこうしたお客さんとともに店が出来上がっていくのだろう。

最近は、本だけで大きな商売をするのはなかなか難しい世の中になってしまった。それは本をつくる側にとっても、本を売る側にとっても同じことだと思う。「本」という存在が雑貨やカフェの装飾になってしまっているショップも少なくない中、真っ当な書店らしさと、花一輪だけでも買って帰りたくなる開かれた間口。それは案外、簡単なことではないと思う。

レジ後ろの棚にはレコード(店主私物)。この日は、ベン・ワット「ノース・マリン・ドライブ」とサニーデイ・サービス「東京」という名盤が仲良く並んでいた。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

blackbird booksHP

blackbird books
交通
北大阪急行 緑地公園駅徒歩約5分
住所
大阪府豊中市寺内2-12-1 緑地ハッピーハイツ1F
電話
06-7173-9286
営業時間
平日11:00~20:00 土日祝10:00~19:00
定休日
月曜

著者プロフィール

和久田善彦

和久田善彦(わくだ・よしひこ)/編集者

ぴあ株式会社関西支社。編集を手がけた最近刊は、2018年3月17日発売の書籍『木造モダニズム建築の傑作 聴竹居 発見と再生の22年』(松隈章・著)。