スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

784 JUNCTION CAFE

7軒目

  • 神戸市垂水区
  • 山陽電車

本もごはんもいい、一日中いられるお店

私が暮らし、仕事の拠点にしている神戸の海沿いの小さな町、塩屋。「784 JUNCTION CAFE」は、この町の住宅街の中にある。古い家屋の建具をそのまま生かしてリノベーションし、質感のいいアンティークの家具を配して、落ち着きのある空間を作り出している。そんな店の一室には、窓からの光が心地いい小さなライブラリースペースがある。オープンして間もなく訪れたとき、「ひとりで静かに過ごせる空間ができた」と、ちょっと心が躍ったのを覚えている。

最初はゆっくり本が読めることがうれしくて通いはじめ、その後、ランチを定期的に味わいたくなり、さらに、季節によって変化する庭の景色を好きになって、外から入る光を浴びたくて窓際のラタンチェアを選んだり、知り合いがいれば中央の大きなテーブルに座ったり。ときには夕日を長めながら、濃いめのコーヒーを飲んで一息つくこともある。なにより、塩屋に住んで、こんなに近くのお店で本が買えるなんてうれしい。最近では、ちょっとした小物やおやつを買って帰ることと、オーナーの伊達尚美さんやスタッフとカウンター越しにおしゃべりをする楽しみも増えた。2016年のオープン以来、小さな“好き”がちょっとずつ積み重なって、お店との距離感や存在感が変化しているなぁと思う。

リノベーションを手がけたのは建築会社・DEN PLUS EGG。
建具の生かし方といい、竹やぶだったという庭の無造作な感じといい、すでにあるものを大切に使う姿勢がうかがえる。

尚美さん自身、もともと本が好きだからできた、ゆっくり過ごせるライブラリースペース。本棚は、看護師時代に出張で訪れた長野・松本で偶然出会った「栞日」がディレクション。最近では、ご縁のある人がつくった本の販売も。
ちなみにこちらは、尚美さんが持っていた本や、いろんな人から集めた本が詰まった棚。

尚美さんは、以前は子ども病院で看護師をしていた。長年、NICU(生まれたばかりの赤ちゃん専用のICU)に在籍し、入院している赤ちゃんとその家族の姿をずっと見てきた。もともと、料理をしたり自宅に人を呼んでごはんを食べることが好きだという理由もあるけれど、前職での経験が「784 JUNCTION CAFE」誕生のきっかけになっている。「病気の子どもがいると、外出もなかなか難しくて。そういう子どもたちや家族が集えて、記憶に残るような場があればいいなと、10年くらい前から漠然と思っていた」という。営業をお昼だけにしているのは、夜の空いている時間にちょっとした家族会やお誕生日会で使ってもらえたら、という思いがあるから。

「カフェというより食堂みたいに、毎日食べても飽きのこないものを提供したい。見た目は地味でも、いい材料できちんと作りたい」というこだわりから、日替わりのお昼ごはん(1,050円※平日のみ)は、なるべく顔の見える人から購入しているという素材を使ったおかずに、土鍋で炊いたごはんとお味噌汁。小鉢はちょっとスパイスの効いた一品など、シンプルだけど尚美さん独特の味付け。

塩屋に長く住んでいる尚美さんのお店だから、地元の仲良しさんたちが来ているのだと思っていたら、お店を始めるまでは人との繋がりはほとんどなかったと言う。塩屋は小さな町で、だいたいの人が顔見知り、といった特性があるから、それを聞いて驚いた。今では、地元の小さな子連れママたちをよく見かけるし、もっと上の世代の常連さんたちも多い。オープンからたった1年で、まるでずっと前からここにあったみたいに町の人たちに浸透し、お店も尚美さんもすっかり町になじんでいる。

このカフェは、息抜きが上手ではない私にとって、肩の力を抜けるとても貴重な場所。たいてい、荷物は持たずに身ひとつで訪れて、頭の中を整理したり、ぼーっとして過ごす。尚美さんはこのお店を、「ここで完結できる場所」にしたいのだと言う。「わざわざ都会へ出かけなくても、家に持って帰りたくなるようなちょっといいものが買えて、本を読んでゆっくりする時間があって、美味しいコーヒーが飲めて。ふらっと遊びに来られるワークショップや音楽イベントがあったり。帰り道の電車の中で、あぁ今日も1日楽しかったなって思ってもらえるようなお店にしたいなぁ」。だから今はまだ道半ばかなと、という尚美さんの言葉を聞いて、いいお店ってきっと、お店の人とお客さんが一緒につくっていくものかもしれない。家のすぐそばに、もうひとつ帰る場所あって、私は今のままでも満足しているけれど、尚美さんの目指す「完結できる場所」の意味が、これからどんどん広がっていきそうな気がしている。

月に一度の夜の営業日「しおやバル9丁目」ではご近所のイベントスペースflagとつくるお料理とオーガニックワインを楽しめる。

ダイニングの横には、テラス席も。春にはテラスでゆっくり過ごすのもあり。

広々としたキッチンの真ん中には、大理石のテーブルが配され、動線も綺麗で使い勝手が良さそう。
天井の造りは以前の建物のまま。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

784 JUNCTION CAFEHP

784 JUNCTION CAFE
交通
山陽電車 塩屋駅から徒歩約15分
住所
神戸市垂水区塩屋町9-14-7
電話
078-778-7071
営業時間
9:00-18:00(モーニング9:00~11:00 ランチ11:30~14:30 カフェ14:00~18:00)
定休日
日・月不定休 ※冬期休暇あり1月下旬~2月中旬

著者プロフィール

山森彩

山森彩(やまもり・あや)プロジェクトマネージャ/ライター

神戸市在住。デザイン・企画会社でディレクター職を経て、2015年に独立。プロジェクトマネジメントを軸に、編集やライター、ときに商店街の事務局スタッフとして活動中。誰かが大事に持っている思いや、町の小さな歴史や文化を言葉にして伝えることをコツコツと続けている。

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