スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

いものはやし

9軒目

  • 京都市伏見区
  • 京阪電車 京都市営バス

途中下車して歩きたくなる、街道のおやつ

京都の五条付近から伏見区までを結ぶ伏見街道。京阪本線と平行するような形で南北に延びる街道のなかでも、京阪藤森駅や墨染駅あたりに差し掛かると、青果店や衣料品店がぽつぽつと並び、商店街の活気を帯びてくる。そのなかで、買いもの帰りのご近所さんが自転車で次々ピットインし、ドライブスルー顔負けの賑わいを見せるのがここ[いものはやし]。ほくほくしたタッチで芋が描かれた木彫りの看板に、白い外壁にクラシックな字体で「HAYASHI」と掲げられた、洋菓子店のようなたたずまい。変な話かもしれないが、お店の外観からして、すでに「おいしそう」なのだ。こちらの創業は70年近く前。初代が戦後に開いた焼き芋専門店を、「閉めるくらいなら」と、ご近所で別のお店を営んでいた林さんご夫婦が二代目として引き継いだ。現在は奥様の弘子さんが細腕をふるい、街道の味を守っている。

こうして自転車で訪れる地元のご夫人方が続出。さっと注文してさっと受け取れる手軽さが、人気の秘訣?!

年代物のショーケースに並ぶ、ふかし芋、焼き芋、スイートポテトの3つが基本のメニュー。主に使う品種はなると金時で、「徳島のなかでも里浦のものが一番」と、何十年も同じ生産者から仕入れている。年々収穫量が目減りしているため、いい芋を確保するのがまず大事。里浦産は「里むすめ」とも呼ばれて特に柔らかく、火を通したときのほっくりとした食感が理想的だそう。一番人気のスイートポテトは、皮をむいてカットした芋を、やや低めの170℃ほどで数十分揚げ、さっと蜜に潜らせたもの。大学芋みたいな黄金色が印象的だが、醤油や砂糖の喉に絡むような甘さは感じない。初訪問のときは、とりあえず200gを買っただろうか。裏ごししたみたいに柔らかくバターを塗ったかのようなリッチな味わいに、「あれっ?」と驚きながら100g。家に持ち帰り「固くなったかな」と思いつつ口にしたところ、ホクッと崩れる食感に再び驚いたまま100g。あっという間になくなった。

醤油の塩味もおいしいスイートポテト(200g)420円。不定期販売の天日干しされた干しいも(170g)500円も人気。

創業以来使っているというショーケースを挟んで。天気のいい日は、看板猫のくうちゃん&りんちゃんの姿も。

近所にある病院へ向かう途中で「お見舞いに」と求める人もいれば、恐らく近所に下宿しているのだろう女子学生が「おいしそ」とつぶやいて財布を引っ張り出す。店頭にはPOPやポスターこそないが、近所の小学生達が作成した[いものはやし]新聞が飾られ、これがまたお店を的確に紹介している。[いものはやし]から自転車で15分くらいの高校に通っていた頃は気づかなかったが、街道と疏水と鉄道のゆるゆるとした3本の線に彩られたこの付近は、きっぱりした碁盤の目とはまた違う京都の風景だ。「なんも難しいことはしてないけど」という枕詞とともに包まれるスイートポテトもまた、精緻な洛中のお菓子とは違う、でも京都らしいおやつだと思っている。せっかくなので会社の皆にお土産を、と思ったけれど、結局ひとりでぺろり。また買いに行かなきゃ、とこっそり途中下車の計画を練っている。

程よい塩気が癖になるふかしいも(100g)170円。包み紙も昔ながらで可愛らしい。

深草小学校の生徒が作った商店紹介の壁新聞。季節限定メニューから売れ筋、混雑具合までよく観察されていて小学生らしからぬ出来映え。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

いものはやし HP

いものはやし
交通
京阪電車 藤森駅下車 徒歩約5分
京都市営バス 直違橋一丁目下車 徒歩約5分
住所
京都府京都市伏見区深草直違橋2-413
電話
075-641-0735
営業時間
9:00~19:00
定休日
日祝

著者プロフィール

ダミーダミー

金子綾(かねこ・あや)/編集者

関西の街の情報誌『Meets Regional』編集部員。「温泉と酒」「京橋」などの特集を担当。生まれは枚方市、高校の最寄り駅は丹波橋、大学は出町柳、会社は淀屋橋…と人生をほぼ京阪沿線で過ごす。