スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

Mole&Hosoi Coffees

1軒目

  • 大阪市中央区
  • 大阪市営地下鉄

忙しい時ほど恋しくなる、 名建築の絵になるカフェ。

いつからか、力の要る書き物に向かう前のスイッチが、決まって細井さんの淹れる季節のコーヒーになった。バックバーに作り付けられたRの効いた木製チェストを眺めながら、鋭角的な鉄のカウンターでプロットを書き出していく。その洒脱な好対照は、寡黙なれども実は優しい細井さんそのもので、弛緩することのない空気も何よりの気付けになる。名案が浮かばなければ階上の名店[RICORDO]や[dieci]で油を売って、入口横の[TIKAL]のチョコレートをひと口頬張ったり。淀屋橋駅から至近という好ロケーションもあいまって、この芝川ビル、そして地下の主[Mole&Hosoi Coffees]にはお世話になりっ放しである。  
進化し続けるクロックムッシュ550円、森彦の季節のコーヒー550円。ランチセットではクロックマダムが登場する
コーヒー豆はもちろん、本や音楽、道具選びにまで、元アパレルらしい細井さんのセレクト眼が表れている
“イケフェス”つまり『生きた建築ミュージアムフェスティバル』が大阪の秋の風物詩として定着したように、大正・昭和の大大阪時代に建てられた近代建築がその役割を読み替えられ、今また存在感を示している。その一因には、それら建築がいわゆる“船場エリア”に密集していることもあるが、何より[Mole&Hosoi Coffees]のような個人店が、ハードの濃さをそれぞれのセンスで解釈し、生かしきっていることが大きい。とりわけテナントのジャンルや業態が巧みに編集されたこの芝川ビルは、週末はゴーストタウンめいていた界隈の回遊の拠点として、今や代表的な存在となっている。
バックバーの特注チェストの見事なカーブを見よ。鋭角なカウンターの鉄、イスの赤いレザーと奇跡の好相性
店に縁の深い有志が、ポスター等を進んでデザイン。年中絶やさない1本のバラが、無骨な中に色気を加味する
[Mole&Hosoi Coffees]は中でも古株で、2008年10月の開店である。90年代後半に始まった堀江や南船場を席巻したカフェブームが海外のメガチェーンに塗り替えられ、さらに今に至る“サードウェーブ”が押し寄せる前のちょうど端境期。元金庫室の味を生かした店内デザインや、仕立てのいいシャツにタイドアップの細井さんの絵になる姿に衝撃を受けた僕は、前述の名建築の再評価や質実が伴った酒場の林立もあって、訪問回数が着実に増えていったように記憶している。「開店当初は気負ってましたね」と細井さんが笑うように、ややストイックに過ぎる部分も見受けられたけれど、元々の味に経年の旨みが乗った現在は、ビルの閉館手前までの夜営業もスタートし、すっかり気持ちのいい“現代的カフェバー”の趣。細井さんの調律する空気に同期する世代や性別を超えた風景が日々展開されており、大人数が苦手で、酒やコーヒー、音楽に満たされたカウンターが好きな僕にとって、いよいよ取り替えの効かない場所になってきた。 「忙中閑あり」、そして「忙中Moleあり」。気が急く瞬間、頑張った日ほど訪れたくなる店があることは幸せなことだし、僕も“いい客”でありたいと思うこの頃。もちろんこのコラムの草稿だって、細井さんのコーヒー片手なのだった。
屋号のMoleは“もぐら”。細井さんのキャラクター、地階へのアプローチも“らしい”。入口横に貸ギャラリーも併設
界隈の名建築と同じく関東大震災後の竣工。オフィス街の中心地ながら、マヤ・インカ文明風の装飾で一目瞭然
スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

Mole&Hosoi CoffeesHP

Mole&Hosoi Coffees
交通
大阪市営地下鉄・京阪 淀屋橋駅下車すぐ
住所
大阪市中央区伏見町3-3-3 芝川ビル B1F
電話
06-6232-3616
営業時間
火〜金曜 11:30頃〜22:00(21:00 L.O)
土曜・日曜 9:30頃〜19:00(18:00 L.O)
祝日 12:00頃〜19:00(18:00 L.O)
モーニングタイム open〜11:00(土日のみ)
ランチタイム 11:30〜14:00
コーヒータイム 14:00〜close
定休日
月曜休/祝日は基本営業

著者プロフィール

藤本和剛(ふじもと・かずたか)/編集者

藤本和剛(ふじもと・かずたか)/編集者

1980年大阪・阿倍野生まれ。大阪大学在学中より『Meets Regional』編集長の江弘毅氏に師事し、副編集長として特集・ファッション・広告等に携わる。現在はMOOK・書籍を担当する傍ら、各種イベントへの参画や執筆活動を展開。現在、手掛けたMOOK『手仕事旅行』が発売中。

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