スルッとKANSAIおでかけ情報誌 Asobon!web

町のお店をこよなく愛するみなさんにお気に入りの一軒を紹介してもらいました。

水辺座

4軒目

  • 和歌山県和歌山市
  • 南海電車

和歌山を愛する水辺のお店

和歌山の仕事帰り、和歌山駅に向かう途中にある橋の上から遠く水辺に灯る明かりがどうも気になった。こういったロケーションに滅法弱い僕は誘惑に負け、そこに向かっていた。店の前に松が植わっている不思議な店。ガラス越しに覗くとカウンターが見える。どうやら酒が飲めそうだ。扉に手を掛け、初めての店に入る時の心地よい緊張感を感じながら進むと、突き当たり一面のガラス越しに川が見える。水が見えると落ち着くのは僕だけではないだろう。奥の小あがりに席をとった。一緒に和歌山を訪れた弟と話していると「スタンダードブックストアの中川さんですか?」と声をかけられた。店主はうちの店のイベントに参加してくれたことがあるという。さらに伺うと、店主の武内さんは元々県庁に勤め、公務員としてまちづくりに関わっていたが、和歌山市主催のリノベーションスクールをきっかけに会社を立ち上げ、この店を始めたそうだ。

水辺座の定番の和歌山おでん。大根、たまご、じゃがいも、こんにゃく(各150円)牛すじ(250円)。

和歌山だけで栽培されている高級山椒たっぷり使ったナッツ(1,512円)。

中央の瓶が、南方熊楠の直筆を使ったその名も南方。純米酒と純米吟醸を常備。

もともと、川沿いは壁だったという。リノベーションスクールによって大きく変貌した店内。

和歌山市内の寺に育った店主の和歌山を魅力的にしたいという想いは、公務員としてのかかわり方ではなく民間からのアプローチに変わったのだろう。そんな彼の和歌山を愛する気持ちはメニューにも表れている。日本酒の品揃えが凄い。ここから至近距離にある南方熊楠の実父が創業した『世界一統』、人気上昇中の『紀土(キッド)』はじめ県内の酒蔵10蔵全てを揃えていて目移りする。ビールも果実酒も和歌山にこだわる。地元和歌山の方も県内にこんなにも沢山のお酒があることを知らないのではないかな?おでんの厚揚げは近くの土肥豆腐店、ごぼ天は天乙商店から仕入れ、下津で大谷君がつくるFROM FARMのナッツ(山椒味がサイコー)と当ても和歌山産が目立つ。さらに急に刺身のオーダーが入ったら近くの居酒屋から調達したり、おいしい煮込みは別の居酒屋から仕入れたりと地元との連携も素晴らしい。最初の出会い以降何度かお邪魔しているが、今はオリジナルの舟も完成したようで、特別な日には川に浮かべてバーベキューなどを提供するようだ。益々店名に相応しく水辺を楽しむことができる。今回の取材時、一緒に武内さんの先輩の展覧会を観て、居酒屋を2軒はしごした。いずれも水辺座から歩ける距離。街は歩くと視点が変わり認識する情報が濃くなるのを実感。水際から人の集まる場ができ、そのエネルギーが波及していくとますます歩いて楽しい街になるはずだ。現在武内さんは飲食店併設のゲストハウスを準備中。その宿も間違いなく街歩きの拠点となり、人と人とのふれあいが街に変化をもたらすだろう。一気に和歌山市駅を降りるのが楽しみになる。

店内の床下には、お酒の瓶の蓋が。

スルッとKANSAIエリアの便利でお得な乗車券

Data

水辺座HP

水辺座
交通
南海電鉄 和歌山市駅下車徒歩約5分
住所
和歌山市元博労町53
電話
050-3709-4964
営業時間
17:00~24:00
定休日
月曜

著者プロフィール

中川和彦

中川和彦

スタンダードブックストア店主。1961年大阪生まれ。2006年に『本屋ですが、ベストセラーはおいてません。』をキャッチフレーズに、カフェを併設する本と雑貨の店・スタンダードブックストアオープン。本は扱うが本屋を営んでいる意識は希薄で人が集まり、人と人が直接触れ合う場を提供したいと考え、ジャンル問わず様々なゲストを招いてイベントを数多く開催。

他の記事を見る

過去記事一覧はこちら