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第6回 技術部のお仕事~山陽電車編~

社局のお仕事

第6回 技術部のお仕事~山陽電車編~

  • 山陽電車

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第6回は、昨年、19年ぶりの新型車両が製造された山陽電車の技術部スタッフ車両担当である田中さんにお話を伺うべく、東二見車庫へお邪魔しました。

——新型車両が完成したということで、遅ればせながらお話を聞かせてもらうため伺いました。今日はよろしくお願いします。突然ですが、新型車両というのは、19年ぶりとお聞きしました。この計画は、どのくらい前からあったのでしょうか?

新型車両について正式に計画が決まったのは3年前なのですが、それ以前から導入したいという話はありました。19年と、かなりスパンがあいていますので、世の中の状況も変わると同時に、技術も変化していますし、お客さまの車両に対するニーズも変化しています。そのギャップを埋める目標がまずありました。ほかの鉄道会社さんがすでに導入している技術をどこまで取り入れられるのか、そこが新型車両の基本設計になってくるわけです。

——コストとも相談しながらですね?

そうですね。

技術部スタッフ車両担当の田中一吉さん。車両に関する取材の窓口としても活躍。

——基本設計となる部分について、もう少しお聞きしたいのですが。

新たに設計したのは、制御系と呼ばれるところですね。例えば、10年ほど前から鉄道車両というのは、VVVFインバーター装置を使って、直流電源を交流に変換して使うというのが、主流になっていました。これにより、直流モーターの時代よりも省エネ。でもパワーは下がるどころか上がるというそんな時代に突入していました。また、直流モーターよりも交流モーターの方が、手入れは簡単でしたが、制御が難しかったんです。でも、半導体技術の進歩がそれを可能にしました。そして、ブレーキ装置に関しても省エネルギーな回生ブレーキの制御範囲が年々広がっており、今回の新型車両ではこれらの環境性能に配慮した装置を採用したというわけです。

——6000系が登場するまでの19年というのは、これまでの車両に改修を繰り返して来られたと?

はい。山陽電車には3000系という車両があるのですが、その車両のリニューアル工事(電気機器、内装等の更新)を行ってきました。

——では、新型車両を作るというのが決まったときには、かなり社内的に盛り上がったのでは?

そうですね(笑)。新型車両を作るというのが決まったときは、盛り上がりました。ただ、19年ともなると、以前、新型車両設計に携わった先輩たちが定年退職をされて会社にいないわけです。資料などのペーパーでは引き継がれているのですが、実際業務やったことがないので、その点は試行錯誤で、苦労しましたね。

念願の新車両の車両構体には、特に強度と耐腐食性に優れているA6NO1S-T5材(Al、Mg、Si系)を使用。(東須磨車庫にて撮影)

——とは言え、だからこそのドキドキ感みたいなものはあったんじゃないですか?

そういうことでいえば、一から自分たちで考えて、どのメーカーの部品を使って、装置のレベルはどこまで上げようなどと検討しました。今までの経験値とか他社さんの車両をリサーチし、それらも参考にしました。

——なるほど。ちなみに、この車両の1両あたりの値段は、おいくらなんでしょうか?

具体的な金額は申し上げられませんが、1台、1億数千万円かかるのが一般的です。後は、台数をどの程度作るかにもよりますし、新型車両であれば、最初に設計費用がかかりますので、それもメーカーによって様々かと思います。

——1両で1億円を超えるんですね! ちなみに、その設計というのは、どのような流れでおこなわれるのでしょうか?

最初に編成長、車体寸法、それから制御装置やブレーキ機器を決めて行くのですが、その点については早く決まりました。その後、車両の外装デザインですが、日本で最初のアルミ車両を作った川崎重工と山陽電車という歴史もあり、アルミの地を活かしたデザインをあげてもらうのですが、そこが意外と時間がかかります。

——アルミを活かしたデザインというのは?

具体的にいうと塗装をしないということです。これまでも、今回もそうなのですが、色のついているところはすべて、スッテカーやシールなんです。塗らないので、コスト面でも安くつきます。

——この新車両の赤は、塗装ではないんですね!

この赤は、コーポレートカラーと警戒色とを兼ね備え、少し離れたところからでも視認性が高いので採用しています。そのほか、側面ドア付近のグラデーションになっているカラーリングは、朝日をイメージしています。新型車両ということで、新しいイメージを取り入れています。扉に色がついているのも、山陽電車としては初の試みとしてここだけは赤色の塗装を施しました。

朝日が昇るイメージのカラーリングを施した車両。また、扉に色を付けるのも今回が初の試み。

——デザインを紙ベースで見られてきて、実際の車両になった瞬間どういうお気持ちでしたか?

やっぱり紙で見ているときと実物とではイメージが違うと思うのですが、私の個人的な感想でいうと、理想的な車両ができ上がってきたなと思います。ただ嬉しいという表現もひとつなのですが、はじめての新造車両ということで、各自ひとしおの思いがあります。細かい部品などのサイズにこだわりをもっていた者に関しては、細部の仕様に対して、思うところがあったり、私は外観にこだわっていたので、車体につけた赤のラインの太さを最後までどうするか悩んでいたところもありましたが、その悩みも実物を見ることで解消されたので、良かったと思います。

——携わった人ならではの、感想というのは、人それぞれやはりありますよね。

いろいろな方に見て頂いて、インパクトがあるといって褒めて頂けると非常に嬉しい気持ちになります。乗り心地もとても良いといわれるので、それも有り難いですね。

——完成後は、みなさんで打ち上げなどはされたんでしょうか?

少しだけ(笑)。でも、電車というのはできたら終わりではなく、その後、実際に営業車として走らせてみた上で、改修点を見つけたり、お客さまからの意見を伺って、改善させていくわけです。完成したからバンザーイ、じゃあ飲みに…ということではありませんでした。お陰さまでこれまで大きな故障等もありませんが、少しずつ改良を行って良くなっています。営業に出る前の設計や完成竣工までと同じくらい、その後の保守、管理が大事なわけです。

——なるほど。浮かれている場合ではないわけですね。

技術者としては、日々の業務の中で実際の車両を見て触ってそこから問題を発見し、解決までのアイデアを考えます。ですので、マニュアル的ではありませんし、ひとつひとつの事象がすべて違うので、それに対して、どのようなアプローチで進めて行くのが良いかというのを、常に考えて取り組んで行っています。

山陽バス80周年記念で登場した6000系とコラボしたバス。(東二見車庫にて)

車内案内表示器は、日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語の4カ国語5言語に対応。

——そうやって日々、電車の整備点検などを行われているわけですね。その電車なのですが、耐用年数というのはどのくらいのものなのでしょうか?

各社が決めている耐用年数というのもありますが、どこまで手を入れるかというのもひとつの基準としてあるかと思います。山陽電車では50年以上使用している車両もありますが、車体がアルミ合金と言う特徴から言いますと、40年以上は使用できると思います。ただ、最近は電子機器部品を多く使用しておりますので、10年ないし20年程度を目途にその部品の交換、更新が必要になってきます。

車内はシンプルで広々とした空間。ベビーカー、車椅子スペースの設置も。座席シートには、兵庫県花の「のじぎく」をあしらっている。

——なるほど。新型車両の話に戻りますが、内装については?

内装のデザインは技術者の弱いところです(笑)。ここは、さまざまな他社さんの車両を見に行きまして、どのようなものを採用されているのか、そして、お客さまの乗り心地や感想も想像しながら、メーカーさんと決めて行きました。

——実際に他社の電車にも乗りに行かれたんですね?

他社で新型車両が導入され、各社局様が試乗会を開催していただく機会にはよく参加してきました。

6000系のパンフレットに掲載されているこの写真、撮影監修はなんと田中一吉さん。小学生の頃からカメラを持って、鉄道写真を撮り続けていたそう。

——(パンフレットを見ながら)へー! すごいですね。写真綺麗に撮れていますね。

パンプレットの写真はプロの方と、私の写真も少しだけ採用してもらいました。子どもの頃から鉄道が好きで、よく撮影に行っていました(笑)。

——では、今は天職ですね。

つらいこともありますが、楽しい仕事です(笑)。

——夢が叶ったと。

そうなんです。子どもの頃から鉄道会社に就職したくて工業高等学校を出て、山陽電車に入社。今年で37年目です。休みの日は、鉄道写真を撮影に行っています(笑)。私の撮った写真が、企画乗車券やカレンダーなどにも使われていたりします。社内には鉄道写真好きがたくさんおりまして、日々活動しています(笑)。

——そんな方々がいらっしゃるんですね!

鉄道会社には結構、多いと思いますよ。

——その方々を集めて、座談会などしてみたいです。

(笑)楽しい企画になりますね。ぜひ機会があれば。

やりたいことを仕事にするということを成し遂げている田中さんの話をお聞きしていると、社局のお仕事を通り越し、働き方への意識の変革も考えさせられるところも。

山陽電車
http://www.sanyo-railway.co.jp/index.html

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