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第5回 プレミアムなお仕事~京阪電車 プレミアムカー編~

社局のお仕事

第5回 プレミアムなお仕事~京阪電車 プレミアムカー編~

  • 京阪電車

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第5回は、先頃、運行を開始した京阪電車の有料特別車両PREMIUM CARに関わるプレミアムな仕事について、3人の方にお話をお聞きしました。

※プレミアムカーの基本情報については、京阪電車のHPをご覧ください。
https://www.keihan.co.jp/traffic/premiumcar/

 

最初に話をお伺いしたのは、車両の設計に携わった機械設計担当の中川新太郎さん(以下、中川さん)です。

——中川さんは、京阪に勤められて何年になりますか?

中川さん「10年目になります。入社して7年間は、現場で整備を担当していました。その後、設計にきました」

——プレミアムカーにはどのように関わられたのでしょうか?

中川さん「設計段階から関わりました。材料の選定やメーカーさんとの打ち合わせ、ガラスの取り付け方法を考えたり、いろいろやりました。機械関係の設計は、5、6人のチームでやっていますが、分担を決めて個々に担当の仕事をするという感じでしたね」

プレミアムカー車内。終着駅につき折り返しの際には、ボタンひとつで席が回転。これもプレミアムカーならでは。

——それ以前にも設計の仕事に携わった経験は?

中川さん「私が異動してきた時、すでにプレミアムカーの構想があり、すぐに携わることになりました。それまで、補修や細かい改良案件に携わることはあったのですが、ここまで大きなプロジェクトはじめてで、非常に勉強になりました」

寝屋川車両基地。京阪の車両のほぼすべての設計がこちらで行われている。プレミアムカーの設計もこちらで行われた。

——今回携わってみて設計の楽しさというのは、どういったところで一番感じますか?

中川さん「初めて本線を走行したとき、まず、おぉーっという感情がわき上がってきました。良いものができたなという実感というか。それから、運転が開始されてベタですけれど、お客さまにご乗車いただいているのを見ると、やって良かったなぁとしみじみ思います。工事中は電気もつきませんし、座席も傷がつかないようにすべて養生された中での作業で、そこまで実感がなかったんです」

——実際、ご自身が乗ってみてはどのように感じました?

中川さん「静かだなと感じました。ほかには、シートもこだわって作りましたので、包み込まれる感じが心地よくて。仕事中なのに、ウトウトしてしまいましたね(笑)」

設計担当の中川さん。こだわりのシートは、なんども打ち合わせを重ね今のものに。
曲面を多用した形状ですが、どこから見ても良い生地、どう貼っても良い生地、かつ触り心地座り心地にこだわったそう。

——そのために作ったということもあるので、そのときは寝て良かったんじゃないですか(笑)。

中川さん「そうですね(笑)。寝心地を検証するのも重要な仕事かなとも思います」

——笑 では、少し話を変えて、KEIHAN FREE Wi-Fiの設置や微粒子イオン発生装置、コンセントの配備、シートの快適性など乗車すれば、すぐにでも実感できるサービスというのは、あると思いますが、座ってすぐには、分からないような例えば、素材が他の車両とは違うといったことはありますか?

中川さん「もともとの目的ではなかったですが、特別車両なので入り口を1つにしたり、床面にカーペットを敷いたりした結果、車内が静かになりました。また、大きく違う点ではありませんが、空調を変えています。プレミアムカーの空調は、車内外の温度などを考慮して全自動で制御しています。また、アテンダントによる設定温度の調節も出来るようになっています」

現在プレミアムカーの車両は10車両。その車両すべてに違う絵が展示されているそう。

——では、先ほど乗ってみて静かと感じたと仰ってましたが、そのときはじめて気が付いたということでしょうか? 

中川さん「はい。実はそうなんです」

——そういったこともあるんですね。ちなみに、静かになった理由にガラスが変更になったということは?

中川さん「窓ガラスは、基本、他の車両と同じ素材です」

——そうなんですね。では、そのガラスと言えば、エントランスと客席との境界線に大きな1枚があります。なかなかあそこまでのガラスが使用されている電車というのは全国的にも珍しいのではないかと思うのですが。

中川さん「そうですね。また、京阪電車として車内に床から天井まで1枚のガラスを入れたことがこれまでなかったので、強度面で苦労しました。あのくらいのサイズで1枚もののガラスというのは、やはり60〜70キロくらいの重量がありますので、それをどうやって固定するのか、ということは試行錯誤しました。ですので、いろんな方法を考えた結果、天井に頑丈な骨組みを作ってそれに固定させています」

こちらが京阪初となるパネルのような大きな仕切りガラス。天井には、骨組みが作られその骨組みでガラスを固定している。

——それを固定するにあたって、何か参考にされたものなどはあるんでしょうか? 例えば、いわゆる住宅で使う方法を参考にするとか。

中川さん「いえ、住宅用などを参考にはしますが、求められている強度も違えば、そもそもの固定の仕方というのが、まるっきり違うんです。そして、電車は火災に対する対策をきちんとしなければなりません。これは法律によってきっちり定められているのですが、それを守るためには、住宅用などの方法をそのまま転用するのは難しいですね」

——では、オリジナルの方法を考えることが多いわけですね。

中川さん「はい」

——簡単についているように見えて、実は、結構な苦労があるわけですね。

中川さん「電車の車両というのは、幅が3メートル弱、長さが18メートルほどあるのですが、そんな大きなものでも、かなり緻密に計算しておりまして、ミリ単位の仕事で職人が作っているのです」

 

職人と設計者が魂を込めて作り上げられたプレミアムカー。そこにこの度、初の試みとして、アテンダントが採用された。利用されるお客さまの出迎え、見送り、また、快適な空間作りのための清掃、空調管理、そして、質問や要望に答えるなど、さまざまな役割を一手に引き受ける。とは言え、マニュアル的にこなすのではなく、それぞれのお客さまのことを考えて行動するというのが、京阪プレミアムカーアテンダントの真骨頂。電車ではなかなか珍しいサービスだけれども、そのお仕事ぶりはいかに? アテンダントをまとめる目黒好恵さん(以下:目黒さん)に聞いてみた。

試運転時に行われた実際の訓練の様子。
こちらは、プレミアムカーのポスター写真にも使われている1枚なので、見たことがある方も多いのでは?

——車内サービスで何かマニュアルとなるものはあるのでしょうか?

目黒さん「これをやっておけば大丈夫というマニュアルはないのですが、お客さまの表情をよく見るということを心がけています。そして、それを感じられる感性を磨くように研修では取り組んでいます」

——そういうプログラムがあるのですね?

目黒さん「自社の接遇マナー訓練というのを行っています。正しい敬語を使うといった基本的なところから、立ち振る舞いについての訓練などを行います」

——ちなみに、アテンダントの方々は、京阪の社員ではないんですよね?

目黒さん「そうです。ANAビジネスソリューションズと申しまして、人材派遣や教育研修の業務などを行っている会社です。社会人のためのマナー講座などは、研修室を使用して行ったりしています。ほかにも、客室乗務員やグランドスタッフを目指す学生に向けてのスクールも実施しています」

アテンダントの業務について、お答えいただいた目黒さん。
「会社の垣根を超えて、お互いのアイデアを出し合いながら業務ができる関係性が、とてもいい環境」なのだとか。

——こういう形で、派遣ではなくひとつの役割を会社で担うというのは、他にもあるのでしょうか?

目黒さん「今回のアテンダント業務以外には、ANAビジネスソリューションズ大阪支社ではこのような仕事は今のところありません。おそらく電鉄会社と航空会社が連携した業務というのは、初めてではないかと思います」

——なるほど。それでは、どういった形で、今回、電車内での訓練を実施したのでしょうか?

目黒さん「スクールには、元客室乗務員やグランドスタッフの講師が在籍していますので、そういったスタッフのこれまでの接客のノウハウを活かして訓練を行っています」

——客室乗務員の方が、教育をされているんですね。とは言え、電車内と機内、駅と空港という場所で、時間の流れるスピードも違うと思います。特に、電車となると、乗降駅がお客さまによって違うとなると、かなり、戸惑うことも多いのでは?

現在アテンダントは35名、うち5名はインチャージと呼ばれる責任者。元客室乗務員やグランドスタッフなどがその任についており、アテンダントの乗車前には、インチャージのチェックを受けるのが、決まり。

目黒さん「そうですね。やはり乗車時間を考えると、どのようにお客さまひとりひとりと接すれば良いのかを、ゆっくりじっくり考えるという時間がありません。ですので、レスポンスを早く的確に返す必要があります。そこが、空港や飛行機の機内とは違うところで、電車の車内ではお客さまの質問や要望に早くお応えしたいと考えていますので、はじめての経験ということもあり、現在、試行錯誤を繰り返しています」

 

そんなアテンダントと日々仕事をするのが運転士や車掌。プレミアムカーの快適空間は、このトリオの連携なしには成立しない。どのようにこの3人を連携させることを考えたのか、指導にあたった半下石卓也さん(以下:半下石さん)に伺った。

——運転士と車掌の間にアテンダントが操業に加わることによって、訓練方法などに変化はありましたか?

半下石さん「今回のプレミアムカーの運行に際して、アテンダントの教育訓練の中で、運転士と車掌が操業中にどのようなところに気を配って連携しているのかを伝えました。また、アテンダントと連携する乗務員の要望等についても教育訓練を通じて伝えることが出来たのも良かった点です。さらに、私自身の体験で言えば、教育訓練を担当したことで、相手に思いを伝えることの難しさを痛感し、指導するうえで直接対話することの重要性に改めて触れ、指導の原点にも立ち返ることができました」

自身の業務としてもはじめてのことで、人前に立って指導をすることが、非常に緊張したと言う半下石さん。
指導員として、学びの機会が多かったそう。

——なるほど。指導も現場を中心にプレミアムな指導になったわけですね。ところで、その訓練時には見えてこなかった現場での苦労というのは、ありますでしょうか?

半下石さん「アテンダントが乗務交代するときは、交代したかどうかを乗務員に分かるように交代完了の合図(片手をあげる)を送ることになっています。お客さまの乗り降りが多い駅ではアテンダントの交代完了の合図が見えにくいということがありました。訓練の時とは違い、実際に運行してみてはじめて細かな点に気づくこともありました」

——確かに京橋駅は、多くのお客さまがご利用になっています。あの中で、目視で確認するのは、難しそうですね。その場合は、現場の臨機応変な対応が期待されるところかと思いますが、現場からの声を聞いてやり方が決まって行くことも多いんでしょうか?

半下石さん「そうですね。ある程度はこれまで現場で培ってきたノウハウを活かした形で、 作業の進め方を決めてはいるのですが、例えば、先ほどのアテンダントの交代完了の合図やまた、終着駅に到着しますと電車の進行方向が変わるので座席を回転させます。座席を回転させる前のお客さまが完全に降車したかの確認や、座席を回転させた後のお客さまの乗車準備完了の連絡など、現場からの意見を取り入れながら、如何に乗務員や駅係員と連携できるかを考えて安全に運行できるよう取り組んでおります。アテンダントに関しましては、訓練までに各々で勉強してくれており、訓練中はこちらが指導することを理解してくれていたので、ある程度は形になっていました。繰り返し同じ訓練を行うときには、前回の訓練での課題を克服し迅速に行動できていたりさらには、アテンダント自身がお客さまへのサービスについてどのようにすれば効率よくできるかを提案してくれる場面もあり、前向きな気持ちが伺えました。教育訓練を通じて私自身も学ぶことが多く、この訓練に携われたことに感謝しています」

 

さまざまなプロフェッショナルが関わって運行されているプレミアムカー。ぜひ一度、この心地よさを実際に味わってみてください。


京阪電気鉄道HP
https://www.keihan.co.jp

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