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社局のお仕事

第12回 奈良交通 連節バス「YELLOW LINER華連」のお仕事

  • 奈良交通

通勤、通学、おでかけと日々使う電車にバス。毎日のように使っているけど詳しくは知らない、そんな交通機関の知られざる舞台裏のお仕事をお伝えするこのコーナー。第12回は、本コーナー始まって以来初となる(バスまつり特別編を除く)バスの登場です。国内ではまだまだ珍しい連節バス。長〜いバスが街を走っているだけでも注目のまとですが、奈良交通の連節バスは、黄色。鮮やかなカラーが人目をひく、そんな連節バスのお話を平城営業所にて、所長の中垣さん、統括課長の木村さん、そして、ドライバーの中村さんに伺いました。

----今日は、よろしくお願いします。早速ですが間近でみると連節バスは長いですね。

木村さん「そうなんです。これだけ目立つ車体ですので、路上教習の際に、地元の方々に写真をたくさん撮っていただいて、多くの人の注目を集めました(笑)」

----バスファンの方々も多かったのでは?

木村さん「はい。いろんな方々に見にきていただいたかと思います」

----なかなか日本でも珍しいと思いますが、連節バスの導入のきっかけというのは?

木村さん「京都府からの要請でした。学研都市に企業誘致を進めて行く中で、渋滞問題、二酸化炭素の削減が課題としてある中で、この連節バスを導入したいという打診がありました。それから社内でいろいろ検討し、精華町の協議会での決定を受けて導入することにしました」

----なぜ、一般的な路線バスでなく、連節バスだったのでしょうか?

木村さん「(バスの)利用が短時間に集中するんです。渋滞を緩和させるためにバスを増やしていきますと、バスによる渋滞という本末転倒なことが起こってしまう恐れもあり、連節バスということになりました。あとはシンボル的な意味合いもあります。さらに、導入前にマイカー通勤されている企業の方にも公共交通機関の利用を促し、最終的には精華町の地球温暖化対策計画を推し進めていこうと」

----壮大な計画ですね。ちなみに、車両の長さは通常の2倍あるのでしょうか?

木村さん「1.7倍ほどになります。乗車定員は、通常の路線バスで70から80名なのですが、こちらはMAX130名乗りとなります」

2018_0820_0488.jpgさすが約2台分、ずっと奥まで席が続く。後部に行けばいくほど少し席が高くなっている。窓が大きく解放的な車内には、カーテンを別注し取り付けた。

----笑 130名! 100名越えてくるとかなりの人数ですね。このタイプのバスは日本国内でどれくらい走っているんでしょうか?

木村さん「スルッとKANSAI加盟でいうと神姫バスさんと南海バスさんが導入されています。あとは関西圏でいいますと近江鉄道さん、関西では4つ目となります」

----導入前に調査へ行かれたんでしょうか?

木村さん「全国各地に行きました」

----全国に!

木村さん「導入前には導入のメリット、デメリットを聞きにまいりました。実は、連節バスというのは国産車がありません。そのため、整備など随分気を使われているようで。国内で生産されているものがないので、大体の会社さんがベンツ製を使用されています。奈良交通の場合は、スウェーデンのSCANIA(スカニア)のエンジンとフレームにオーストラリアのバス車体メーカー「ボルグレン(VOLGREN)の車体」を載せたものになっています」

----メーカーによってどのような違いがあるのでしょうか?

木村さん「ちょっとした違いはたくさんあるんですが」

中垣さん「座席数が違いますね」

木村さん「他にも、導入を検討していた段階では、スカニア製の方が、環境性能がよかったです。日本国内の一番厳しい基準もクリアしていましたので、そこは違いました(現在はベンツ製のものも同じ基準をクリアするものが販売されている)」

2018_0820_0498.jpg連節部の車内の様子。このアコーディオンのようなところがカーブでは伸縮し90度に曲がっていく。ちなみに連節部の足元のターンテーブルは、この仕組みを作った会社の企業秘密なのだそう。

----なるほど。そんな違いがあるんですね。

木村さん「導入を決めてからは、先行導入されている全国の会社に、いろいろ見せていただいたりしました。また、西鉄バスさんには同じ車種をお持ちということで、運転の教習などにご協力も頂きました」

----西鉄さんから指導された事で重要だったのは?

木村さん「運転指導を担う人間も、全く手探りの状態で行っていましたが、実際運転されている他社の方々は、"観光バスを運転できれば、だいたい運転できますよ"とおっしゃる方が多くおられました。とにかく、基本のバスの運転に忠実に、曲がる時には直角に曲がるを徹底することが重要でした。あとは、バックです。路上では何が起こるかわかりませんので、バックができないといけません。ですので、奈良県内の別の営業所になるのですが、曲がる訓練とバックを練習し、きちんとできた人のみ路上に出るということを行っています」

----バックするんですね! すごく高い技術な気がしますが。路上でバックしているのを想像すると、すごそうです。

木村さん「基本的にはそういうことのないように、経路選びなどは行っていますが、前方で何か事故が起こったなど、不測の事態というのは考えられますので、いざという時の技術としてバックは習得して、路上に出てもらっています」

----立ち往生ではいけませんし、確かに重要ですね。バスのカラーリングについて、非常に目立つ色を採用されていますが。

木村さん「当社の一番利用の多い奈良市内の市内循環の路線バスで、目立つ色を採用しようということで黄色にしたところ、統計をとったわけではありませんが、事故につながるヒヤッとする事例というのが減ったという意見がありました。連節バスの場合、これだけ大きな車体ですので、目立つ黄色を使うことによって、より一層安全につながるのであればということで、黄色に黒をあしらいました。その中に鹿が駆け上がっていくようなイメージを持たせるというのは、デザイナーさんが考えてくださったデザインです」

----かっこいいですよね。鹿の色もシルバーで。何よりも黄色と黒のカラーリングというのは、球団を彷彿とさせる組み合わせではありますが、それとはまた違った印象を持たせてくれているのも、おもしろいところだなと思います

木村さん「ストライプだとまたそういったイメージが強くなるかもしれませんね。あとは、デザイナーさんに黄色を強く打ち出すようなイメージにしてほしいという要望を伝えていたからかもしれません」

----連節バスが普通のバスと違う点というのは?

木村さん「性能面ではありますが、ご利用面でいうと特に変わっているところはありません」

----性能面という言いますと?

木村さん「普通のバスのエンジンは後部にあるんですが、この連節バスのエンジンは2両目にあります」

中垣さん「そうです。2両目にあって押してるんです」

2018_0820_0348.jpgカーブの度に後部車両の最後尾座席が見えなくなるなど、とにかく死角が多いため、運転席にはモニターが何台も設置されている。

----えっ! 引っ張っているのではなく、2両目が押している?

中垣さん「はい。実際にバスを見ていただいたらわかりますが、三軸目が前の車両を押して動いています」

木村さん「意外に小回りもききます」

----後ろは箱だけと勝手に勘違いしていました。

中垣さん「そういう構造なので、けん引免許ではなく、大型二種の免許でそのまま運転できるんです」

2018_0820_0343.jpg座席の横に複数あるボタン。こちらは背もたれの腰や背中部分にエアを入れ、ドライバーにあった座り心地を実現させるために設置されている。女性ドライバーの中村さんは、特に腰が背もたれと離れすぎるのがこれまで気になっていたそうだが、この機能があることで密着感があり、ブレずに運転できるようになったそう。

----もう少し詳しく聞かせてください?

中垣さん「トレーラーはキャビンがあって、そのキャビンが後ろを引っ張る構造になっています。ですので、前後の取り外しが可能で、前のナンバーと後ろのナンバーが違うと思いますが、このバスに関しては、前も後ろも同じナンバー、つまり切り離しができません。だからこの連節の状態で1台ということなんです」

----なるほど。よくわかりました。とはいえ、とても運転が難しそうと思ってしまいます。

中村さん「難しい場面もあるかもしれませんが」

木村さん「だから運転席はモニターだらけです」

中垣さん「曲がったらすぐ死角なので。一番後部座席に座ると、バスが曲がると前の車両が見えなくなります。側面だけでドライバーの姿は見えないです」

2018_0820_0415.jpg今回お話を伺った(左から)中垣さん、木村さん、中村さん。中村さんは、ドライバーの指導も行い腕も確かなドライバー。

----ちなみに運行ルートでは曲がり角は多いんでしょうか?

中垣さん「(地図を見ながら)多いですね。全部直角になります。精華大通りに関しては直線なのですが、そこから曲がっていくのは全て交差点を直角に曲がります。実車ルートに関しては、全部片側2車線になっていますので、運転はしやすいです。一部回送ルートの中で狭いところがありますので、運転手の技量に頼るところがあります。ですので、研修は非常に大事です」

----研修期間というのはどのくらいあるのでしょうか?

中垣さん「公休を入れて、10日間しております。6日間が場内で、あと3日間が路上でさせていただいております」

----このバスを導入して変わったことはありますか?

木村さん「バスそのもの以外に大きく変わった点というのは、お客様の目に触れる場所ではありませんが、これを整備する場所を作らないといけなかったことです」

2018_0820_0578.jpg車体を購入するだけでは導入できないため、こちらの営業所では新たに整備できる場所などを新設。1台導入するだけでもかなりのコストがかかることが伺える。

中垣さん「奈良県で車検が可能なところがありませんでしたので、こちらの車庫に認証工場というものをつくりまして、分解修理ができるように設備を整えました」

----自前でできるようにということですね。結構お金がかかってそうですね(笑)。

木村さん「最終的にはやはりCO2削減につなげるための導入でありますので、環境省からの補助金も利用させていただきました」

----随分削減になっているんですか?

木村さん「この車両1台分でみると、一般的な路線バス1台より少し多いくらいなんです。しかしながら、このバスを導入することで、近隣の企業の方々にマイカー通勤をやめていただいたり、中には企業内でマイカー通勤禁止にしてくださっている会社もあります。そういう総合的な計画で二酸化炭素の排出量を減らすという取り組みをしています」

----現在、どの程度の乗車率なのでしょうか?

木村さん「現時点でまだ企業進出も100パーセント完了したという段階ではありませんが、ピーク時で100人程度乗車いただいたこともあります」

2018_0820_0482.jpg乗車前には必ずオイルと水の点検を。中村さんは20年以上のベテランドライバー。運転が好きだったことと手に職を身につけたいという気持ちから、この道を志したのだとか。

----単純な疑問ですが、バス停はどうなっているんでしょうか?

木村さん「バス停も停車できるように、京都府さんに改修していただきました。駅前広場についてもこれまで自家用車と共用だったんですが、バスが増便すること、そして連節バスが入ることもあり、精華町さんにそれぞれ分けていただきました」

----いろんなところが動いての連節バス導入だったんですね。

中垣さん「お客様からもピーク時には、一般の路線バスだと1便増やしてもぎゅうぎゅうで、さらなる増便などご希望いただいておりましたが、こちらを導入してからは、緩和されています」

----今後については?

木村さん「現在は、企業利用が中心ですが、精華町の住宅地まで計画としては行く予定となっていて、最終的には登美ヶ丘駅まで走る計画です」

----このバスは、一つの観光にもなりそうですね。奈良市内など走ったりすると非常に注目をあびそうですよね。現実にできるかできないかは別としてですが。

一同 笑

木村さん「この車両に乗るために精華町に訪れてこられる方が、いらっしゃる。つまり、これが目的になっているというのは、あります。特に夏休みなので親に連れられて子どもがリュックを背負って乗っているという光景も見られますね」

----いいお話ですね。手段が目的になる。そういう光景が少しでも増えると街も変わっていきそうです。今日はどうも有難うございました。

2018_0820_0358.jpg日本製は運転席側に非常扉があるけれども、海外仕様の非常扉は天井部に。理由は、非常時の考え方の違い。海外は、横転した時が非常時のため。横に非常扉があっても出られなくなる。

奈良交通
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